「カラマーゾフの兄弟」をもう一度読みたい。

朝日新聞12月28日朝刊「天声人語」にドストエフスキーと「カラマーゾフの兄弟」の事が出ていた。
 
世の中には二種類の人間がいる。『カラマーゾフの兄弟』を読破したことがある人と、読破したことのない人だ。」
 
・・・そう書くのは村上春樹さん。

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私は学生の頃、本が好きだった事と暇だったのでこの本を読破した。
中央公論社の世界の文学シリーズの中の「罪と罰」と「カラマーゾフの兄弟」を持っていて、両方とも読んだ。
今見ると字は小さいしハードカバーで、如何にも古典文学全集然とした本だ。

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確かに長いし(二巻)、何度も挫折しそうになったが、ミステリー仕立てで面白いことと、この本のハイライトである大審問官の章までは読みたいと思っていたのでとにかく最後まで読んだ。
確か大学の時ゼミの合宿で山中湖へ行き、宿舎のベッドに横になって、真剣にこの箇所を読んだ記憶がある。
恐ろしいけれどもとても興味深い物語だった。
 
先日NHKEテレの「!00分で名著」で「カラマーゾフの兄弟」を紹介していた。
講師が亀山郁夫氏で、近年彼が訳した本がわかりやすく面白いと評判出そうだ。
あの頃の印象とどう違うのか?
再度この長編小説に挑戦しようと思い、まずは氏の訳の本の1巻目を購入した。

青春18切符で奈良の旅(2日目)  

近鉄奈良駅近くのビジネスホテルへ泊まった次の日(11日)は、まず旅行では恒例の早朝ウォーキングで東大寺へ。

運慶快慶の阿吽の金剛力士像が睨みをきかせる南大門から右側にある二月堂へ。

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ここは数年前妻と奈良旅行の折も行ったけれど、自由に回廊に登ることが出来、しかも奈良の山並みや街を一望できる。

とにかく拝観料がバカにならない奈良にとって、無料で国宝の建物に上がることが出来る貴重は建物がこの東大寺二月堂。

拝観料を払えばお賽銭は払う気がしないが、ここでは唯一賽銭を納め合掌した。

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ホテルをチェックアウト後、再びレンタサイクルをかり、世界遺産元興寺から春日山から三笠山が連なる傾斜のある道を白毫寺へ向かった。

友人がお勧めのこの寺、花の名所と展望の良さで有名のようだが、確かにこじんまりと佇まいの美しい寺だった。

お隣の新薬師寺へ行く途中に文豪が晩年執筆したり友人を招いたりした豪邸、志賀直旧邸があり趣味のいいインテリアを拝見出来た。

 

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それから向かった新薬師寺、行く前までそれほど期待のなかったこの寺、なんと今回の最高の出会いの場所であった。

建物は天災でほとんどなくなってしまったが、金堂内に並ぶ仏像の数々にどきもを抜かれた。

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(新薬師寺堂内は撮影禁止なので仏像の画像は絵はがきから)

中心に鎮座する薬師如来の周辺を外向きに十二神将が囲む。

一番有名なバサラ大将から始まって右回りにアニラ、ハイラ、ヒギャラ大将など、干支と関連づけた武将立像が十二体並んでいる。

そこはまさしく美術館ではない、あの世を模した別世界。

仏の慈悲深き姿を悪霊に犯されまいと、物凄い形相の武将が目を光らせている。

薄暗く、所々蝋燭に照らさせて荘厳極まる堂内はまさしく寺社の本来の姿だ。

バサラ大将側には椅子が並んでいて、参拝者が数人いつまでも立ち去らず眺めている。

 

見方を変えれば、それはアニメやフィギュアの世界に通じるものがあると思う。

小中高校生をここへ連れてくれば大喜びするだろう。

ガラスケースに入った国宝を展示する法隆寺に学生の団体が多数いたが、この新薬師寺を見れば強力な思い出になるのではないか。

他の寺では何も買わなかったが、ここでは絵葉書と干支のお守りを手に入れた。

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最後はささやきの小径をチャリを引いて春日大社に向かった。

寺院とは違って立替したばかりのやしろが並び華やいだ印象だ。

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坂を下り、柿の葉寿司で昼食を済ませ、土産を買って帰路に着いた。

帰りは奈良線で京都に向かい、快速、各駅を乗り継いで静岡へ向かった。

青春18切符で奈良の旅(1日目)

12月の10日と11日、青春18切符を使って奈良へ行ってきた。

行きは静岡から名古屋まで東海道線。名古屋からは関西本線で奈良へ。

途中、亀山から加茂まで、電化されていない区間ディーゼル車に乗った。

一両のみのワンマンカーで、加速する時のグーンという音がなんとも懐かしく、各駅停車ならではのハプニングが楽しめた。

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さて、1日目午後は斑鳩の里、法隆寺近辺をレンタサイクルで巡る。

今回の目的は、多分高校の修学旅行以来と思われる法隆寺百済観音をもう一度拝観する事。

修学旅行で間近にみたあの長身でスリムな百済観音の印象は今でも鮮明に覚えている。

五重塔、金堂、回廊、夢殿等、多くの国宝の建物を見学した後、さて百済観音はと思ったら、新しく出来た宝物館(大宝蔵院)のような建物の中にあった。

この建物、法隆寺の名宝の数々が安置されているが、何と全てがガラスケースの中。

あの美しい百済観音も寺の宝というより、国の宝然と厳重に守られたケースの中。

玉虫の厨子も静岡で観た夢違観音も、国立博物館で観るのと同じ飾られ方で収まっている。

 

高校生の時に観た感動はスーッと消え去り、ただ有名な国宝がそこにあるだけでたいした感慨もなかった。

むしろ、スルーしようと思った中宮寺へ行って、有名な弥勒菩薩が御堂の中心に鎮座し、優しいアルカイックスマイルを湛えた姿がとても美しかった。

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続いてチャリで、法輪寺法起寺へ。

共に三重塔で有名だが、特に法起寺の三重塔は現存する最古の三重塔とか。

さらに収納庫に安置されている十一面観音は金色が残り神々しい姿で、しかも撮影OKというところが嬉しかった。

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電車でJR奈良駅に戻り、徒歩で近鉄奈良駅の近くにあるビジネスホテルへ。

夕食はネットで見つけたうどん専門店で釜揚げうどんを堪能した。

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brotherhood 対 sisterhood / アメリカ映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」

brotherhoodsisterhoodの対決のような映画。

 

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男女の性の関係に於いて、この映画のように

攻める側にとって性は快楽の1つに過ぎないけれども

守れない側にとっては死に値する屈辱となるケースがある。

 

男性の同志はことの重大さが理解出来ず、

犯した罪を隠すことでつるむ、悪のbrotherfoodとなり。

女性の同志は自分のこと以上に友の死が許せず、復習を誓い、

ひとり男性たちを陥れていく愛のsisterfoodとなる。

 

男性の多くがそうであるように、気づかないことは罪である。

男には意識下にある、女性の受けてきた差別や被害の数々を

女性監督が厚化粧タッチの映像で表現した傑作です。

 

ただ、観ていてずっと居心地悪くて、決して好きな映画ではありません。

 

(2021/8/15 静岡東宝会館で鑑賞)

「四字熟語」はシニアの頭の体操

ある作業をするために四字熟語に注目した。

解っているようで解らない「四字熟語」の世界。

 参考にと二冊の本を取り寄せた。

 

「四字熟語ひとくち話」岩波書店辞典編集編 (岩波新書

 「中国の四字熟語」祐木亜子著 (日本実業出版社

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まずは岩波の方だけれど、これが読み始めたらめちゃめちゃ面白い。

知っている四字熟語は半分以下、知らない四字熟語が半分以上あるかな。

いや、知っていても、読んでいくと元々思っていた使われ方とは大違い。

 例えば、親子・夫婦・人の縁の章だけでも・・・。

 

「夫唱婦随」ふしょうふずい

 

もちろん仲の良い夫婦の状態のことを言うのでしょうが、

「夫の唱えることに妻は従う」の意味。

今はそんな事で悦に入っていたら妻にバカにされる。

いや、読むだけなら「婦唱夫随」とも取れるから、いいかも。

 

 「一顧傾城」いっこけいせい

 

美女の一振り向きで城の機能(政治)がダメになってしまう。

「傾城」は日本の遊郭での最高の遊女の呼称にまでなった。

もっとも、昨今のBLブームで美男ホストの一振り向きが

女性の人生を狂わせてしまうかも。

美男美女は存在だけで罪人なんだという事でしょう。

 

「鰥寡孤独」かんかこどく

 

鰥(かん)は妻を失った男、寡(か)は夫を亡くした女、

孤(こ)は親のない子、独(どく)は老いて子のない者。

「身寄りとて誰一人ない、天蓋に鰥寡孤独で生きておるような訳でして、

 その分返って気楽・・・」などと使うそうだ。

 

・・・てな具合に、面白い四字熟語とその解釈がたっぷり載っている。

また、「中国の四字熟語」の方は「まえがき」を読んだだけだが更に面白そう。

四字熟語の元祖、中国の古典や中国人の政治、社会、恋愛、庶民の知恵など

四字熟語から見えてくる中国文化を知るのにもってこいの本のようだ。

 

楽しみ。

海外でこそ大受けしそうな映画 / 日本映画「いとみち」(横浜聡子監督)

青森県津軽を舞台に、メイドカフェでアルバイトする

人見知りな津軽弁少女の奮闘と成長を描いた青春ドラマ。

「いとみち(糸道)」とは三味線を弾く時に爪にできる溝のこと。

 

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津軽弁津軽三味線というローカル色の魅力がたっぷり。

と同時に、よくある家族の物語を普遍的に描く事も成功して、

外国でもヒットしそうな魅力あふれる日本映画が誕生した。

 

主人公を演じる駒井連の本物の津軽弁とどんくさい表情。

実際の三味線の名手であるおばあちゃん役の西川洋子の

理解不明津軽弁と見事な三味線演奏。

加えて田舎に染まらない東京出身の父(豊川悦司)の似非学者ぶり。

その他、監督俳優等、津軽のスタッフが結集し

青森でオールロケしているのでリアル感たるや半端でない。

 

特に丁寧に描いているのが父と娘と祖母の関係。

母亡き後、一緒にいても対話のない父娘を引き寄せる糸になり、

対立する時のクッション役をも務める祖母の存在。

後半、ようやく互いに向き合うようになる父と娘。

父は娘のアルバイト現場に出向き、娘は父の趣味の登山を一緒にして、

知らなかった互いの世界を共有することで近づいて行く。

 

そして、私は存在すら知らなかった「メイドカフェ」の面白さ。

東京の真似をすることが地方のビジネスが生きる道と居直る店長

や訳ありの二人のメイド仲間が主人公をしっかり支えている。

客は爺さんから若者まで、さらには女性グループまで

「お帰りなさい、ご主人様」と歓迎しているのだから。

 

それにしても最近の女性監督の活躍はすごい。

「素晴らしき世界」「あの子は貴族」「ノマランド」そして「いとみち」

全て傑作ぞろいでますます面白くなってきた。

けっぱれ、日本の女性監督!

7/3 静岡東宝会館で鑑賞)

itomichi.com

 

 

男性を侮るなかれ。

先月(5/7)の朝日新聞の声の欄に

「男性脱衣所に女性の清掃員 不快だ」

という中年男性からの投稿があった。

 

「多くの公共浴場やスーパー銭湯の男性脱衣所で

女性の従業員が掃除をしているケースが多い。

なんとも思わない男性もいるだろうが自分は不愉快だ。

女性脱衣所に男性従業員が入ったら大変なことになるだろうに。

また、公園などの男性トイレで小便器が丸見えのところがある。

これも気になる。早急に改善を求めたい。」

 

・・・という内容の記事だった。

私も同感だけれど、女性も被害者なんだよな。

まずは経営者、責任者の意識改革が必要だと思う。

 

その他、男性だからと軽視されているケースはいくつもある。

私がとても不快に思ったTVドラマの一場面がある。

一昨年ほど前になるが、ゲイのカップルを描いた評判のドラマ

きのう何食べた?」の中でこんな話があった。

  

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料理好きな主人公しろさんがスーパーでスイカを見ていた女性と丸のスイカ

半分コすることになり、彼女の家に一緒に持って行くことになる。

ところがこの女性、家に着き、男女1対1である事に気付くと、

何を思ってか急にしろさんが恐ろしくなり「レイプされる!」など大声を出す。

その場に窮したしろさんは思わず「私ゲイなんです。」と叫んでしまう。

途端に安心したのか打ち解けて、その後帰宅した娘や旦那に

彼がゲイであることを告げ、しろさんを肴にゲイ談義が始まる。

しろさんはパートナーのケンジと違って、

ゲイであることを他人には公にしていない、なのに・・・。

 

自分の言いたくない事を咄嗟の場面で言わざるをえなくなってしまう。

ユーモラスな場面には違いないが、よく考えるとその男性にとっては

最も屈辱的な出来事ではないか。

第一、弁護士でもある人間が初対面でこんな軽率なことをするだろうか? 

 

仮にTVドラマの創作ではなく、原作のコミックにあったとしたら、

女性のコミック作者がこの場面を笑い飛ばして描く事の

デリカシーのなさに呆れてしまった。

笑って済まされるレベルの問題ではないだろうに。

 

6/24のNHKクローズアップ+で「男性の性被害」の番組があった。

人間の尊厳に直結する性の問題。

こちらも男性だからと軽く見過ごされていいわけはない。