何と言ってもバーンスタインの音楽/映画「ウエスト・サイド・ストーリー」スティーブン・スピルバーグ監督

旧作のロバート・ワイズ監督「ウエストサイド物語」は中学三年の時に観た。

勉強を教えてもらっていた静大の学生さんが連れて行ってくれた。

自分はその時の印象を覚えていないが、彼が「踊りが素晴らしいね。」と言ったことを覚えている。

 

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それから、リバイバルなどでその映画を何度も観て、今ではセリフ、歌詞まで口ずさむ事ができる。

主人公たちの名前や、俳優、作曲家はもちろん振付師や作詞家の名前までスラスラ言える。

 

そのくらい私の青春の金字塔であったミュージカル映画スピルバーグ監督によってリメイクされた。

いつも上映が終わりそうになると観に行く映画が多い中で、この映画は公開三日目に妻と観に行った。

 

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オープニングのタタータ・タタタから音楽が静まるラストまで、曲の順番も会話もほとんど一緒。

マリアが言う「デアドール・アントン」(トニー、愛している)ももちろんあった。

だから当然旧作との比較になる。

 

中盤までは俳優のかっこよさや整然としたダンスの上手さで旧作の方が全然いいと思っていたが、終盤の決闘の場面から俄然、ミュージカルというよりドラマチックな要素が強くなり、映画としてよく出来ていると思った。

 

旧作をあまり知らない人はこの映画をどう思うのだろう。

とにかく、音楽が最高。クラシック音楽の要素が多分にあり、少しも古くならない。

さすが巨匠レナード・バーンスタインの音楽だと、彼の偉大さを再認識した。

今年最初に観た映画/日本映画 「偶然と想像」濱口竜介監督

今年最初に観た映画。
日本映画 「偶然と想像」 濱口竜介監督
 

 
確かに人の行動は「偶然」に左右される。
そしてその偶然をもとに「想像」を巡らす人間の面白さ。
言葉の洪水を一言も聞き逃さず映画を観ているうちに見えてくる、
偶然に翻弄される人たちの、嘘のような本当のような姿が生々しい。
この監督、カット割りなんかするのかしらと思えるくらい
場面場面のリアル感が凄い。
正月早々、実に新鮮な映画を観た思いで、爽快な気分になった。
(2022/1/4 静岡シネギャラリーで鑑賞・1/13まで続映)

今年見た映画14本

今年観た映画は14本。

20本が目標だから少ない。

「きみが死んだあとで」「ONODA1万夜越えて」など観たかったけれど見逃した映画もある。

 

燃ゆる女の肖像

あのこは貴族

天国に違いない

すばらしき世界

シカゴ7裁判

ノマランド

街の上で

アメリカンユートピア

いとみち

プロミシング・ヤング・ウーマン

ドライブ・マイ・カー 

由宇子の天秤

007ノー・タイム・トゥ・ダイ

ボストン市庁舎

 

その中で特に気に入った3本は・・・(公開順)

 

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日本映画 「あのこは貴族」 岨手由貴子 監督作品

日本的な優雅さと繊細さが映画の基調にある上で、都会に生きる新しい女性達の生き方を爽やかに描いたシスターフッド的映画

私達男性も共感出来る、大好きな映画で二度観た。

 

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アメリカ映画 「ノマランド」 クロエ・ジャオ 監督作品

アメリカの伝統のカウボーイやヒッピー的生活を想像させながらも、主人公が女性である事、高齢である事が今の時代を感じさせる。

全てを捨てて彼女はどこへ行くのか?

ラストがとても暗示的だった。

 

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日本映画 「ドライブマイカー」 濱口竜介監督作品 

今年最も注目された映画ではないか。

この濱口竜介監督の映画の持つ空気感は「ハッピーアワー」「寝ても覚めても」はじめ、最も自分の好きな映画感覚だと思う。

新春に観たい「偶然と想像」が楽しみ。

 

来年はさらに多くの映画を観なくては。

「カラマーゾフの兄弟」をもう一度読みたい。

朝日新聞12月28日朝刊「天声人語」にドストエフスキーと「カラマーゾフの兄弟」の事が出ていた。
 
世の中には二種類の人間がいる。『カラマーゾフの兄弟』を読破したことがある人と、読破したことのない人だ。」
 
・・・そう書くのは村上春樹さん。

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私は学生の頃、本が好きだった事と暇だったのでこの本を読破した。
中央公論社の世界の文学シリーズの中の「罪と罰」と「カラマーゾフの兄弟」を持っていて、両方とも読んだ。
今見ると字は小さいしハードカバーで、如何にも古典文学全集然とした本だ。

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確かに長いし(二巻)、何度も挫折しそうになったが、ミステリー仕立てで面白いことと、この本のハイライトである大審問官の章までは読みたいと思っていたのでとにかく最後まで読んだ。
確か大学の時ゼミの合宿で山中湖へ行き、宿舎のベッドに横になって、真剣にこの箇所を読んだ記憶がある。
恐ろしいけれどもとても興味深い物語だった。
 
先日NHKEテレの「!00分で名著」で「カラマーゾフの兄弟」を紹介していた。
講師が亀山郁夫氏で、近年彼が訳した本がわかりやすく面白いと評判出そうだ。
あの頃の印象とどう違うのか?
再度この長編小説に挑戦しようと思い、まずは氏の訳の本の1巻目を購入した。

青春18切符で奈良の旅(2日目)  

近鉄奈良駅近くのビジネスホテルへ泊まった次の日(11日)は、まず旅行では恒例の早朝ウォーキングで東大寺へ。

運慶快慶の阿吽の金剛力士像が睨みをきかせる南大門から右側にある二月堂へ。

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ここは数年前妻と奈良旅行の折も行ったけれど、自由に回廊に登ることが出来、しかも奈良の山並みや街を一望できる。

とにかく拝観料がバカにならない奈良にとって、無料で国宝の建物に上がることが出来る貴重は建物がこの東大寺二月堂。

拝観料を払えばお賽銭は払う気がしないが、ここでは唯一賽銭を納め合掌した。

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ホテルをチェックアウト後、再びレンタサイクルをかり、世界遺産元興寺から春日山から三笠山が連なる傾斜のある道を白毫寺へ向かった。

友人がお勧めのこの寺、花の名所と展望の良さで有名のようだが、確かにこじんまりと佇まいの美しい寺だった。

お隣の新薬師寺へ行く途中に文豪が晩年執筆したり友人を招いたりした豪邸、志賀直旧邸があり趣味のいいインテリアを拝見出来た。

 

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それから向かった新薬師寺、行く前までそれほど期待のなかったこの寺、なんと今回の最高の出会いの場所であった。

建物は天災でほとんどなくなってしまったが、金堂内に並ぶ仏像の数々にどきもを抜かれた。

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(新薬師寺堂内は撮影禁止なので仏像の画像は絵はがきから)

中心に鎮座する薬師如来の周辺を外向きに十二神将が囲む。

一番有名なバサラ大将から始まって右回りにアニラ、ハイラ、ヒギャラ大将など、干支と関連づけた武将立像が十二体並んでいる。

そこはまさしく美術館ではない、あの世を模した別世界。

仏の慈悲深き姿を悪霊に犯されまいと、物凄い形相の武将が目を光らせている。

薄暗く、所々蝋燭に照らさせて荘厳極まる堂内はまさしく寺社の本来の姿だ。

バサラ大将側には椅子が並んでいて、参拝者が数人いつまでも立ち去らず眺めている。

 

見方を変えれば、それはアニメやフィギュアの世界に通じるものがあると思う。

小中高校生をここへ連れてくれば大喜びするだろう。

ガラスケースに入った国宝を展示する法隆寺に学生の団体が多数いたが、この新薬師寺を見れば強力な思い出になるのではないか。

他の寺では何も買わなかったが、ここでは絵葉書と干支のお守りを手に入れた。

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最後はささやきの小径をチャリを引いて春日大社に向かった。

寺院とは違って立替したばかりのやしろが並び華やいだ印象だ。

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坂を下り、柿の葉寿司で昼食を済ませ、土産を買って帰路に着いた。

帰りは奈良線で京都に向かい、快速、各駅を乗り継いで静岡へ向かった。

青春18切符で奈良の旅(1日目)

12月の10日と11日、青春18切符を使って奈良へ行ってきた。

行きは静岡から名古屋まで東海道線。名古屋からは関西本線で奈良へ。

途中、亀山から加茂まで、電化されていない区間ディーゼル車に乗った。

一両のみのワンマンカーで、加速する時のグーンという音がなんとも懐かしく、各駅停車ならではのハプニングが楽しめた。

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さて、1日目午後は斑鳩の里、法隆寺近辺をレンタサイクルで巡る。

今回の目的は、多分高校の修学旅行以来と思われる法隆寺百済観音をもう一度拝観する事。

修学旅行で間近にみたあの長身でスリムな百済観音の印象は今でも鮮明に覚えている。

五重塔、金堂、回廊、夢殿等、多くの国宝の建物を見学した後、さて百済観音はと思ったら、新しく出来た宝物館(大宝蔵院)のような建物の中にあった。

この建物、法隆寺の名宝の数々が安置されているが、何と全てがガラスケースの中。

あの美しい百済観音も寺の宝というより、国の宝然と厳重に守られたケースの中。

玉虫の厨子も静岡で観た夢違観音も、国立博物館で観るのと同じ飾られ方で収まっている。

 

高校生の時に観た感動はスーッと消え去り、ただ有名な国宝がそこにあるだけでたいした感慨もなかった。

むしろ、スルーしようと思った中宮寺へ行って、有名な弥勒菩薩が御堂の中心に鎮座し、優しいアルカイックスマイルを湛えた姿がとても美しかった。

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続いてチャリで、法輪寺法起寺へ。

共に三重塔で有名だが、特に法起寺の三重塔は現存する最古の三重塔とか。

さらに収納庫に安置されている十一面観音は金色が残り神々しい姿で、しかも撮影OKというところが嬉しかった。

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電車でJR奈良駅に戻り、徒歩で近鉄奈良駅の近くにあるビジネスホテルへ。

夕食はネットで見つけたうどん専門店で釜揚げうどんを堪能した。

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brotherhood 対 sisterhood / アメリカ映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」

brotherhoodsisterhoodの対決のような映画。

 

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男女の性の関係に於いて、この映画のように

攻める側にとって性は快楽の1つに過ぎないけれども

守れない側にとっては死に値する屈辱となるケースがある。

 

男性の同志はことの重大さが理解出来ず、

犯した罪を隠すことでつるむ、悪のbrotherfoodとなり。

女性の同志は自分のこと以上に友の死が許せず、復習を誓い、

ひとり男性たちを陥れていく愛のsisterfoodとなる。

 

男性の多くがそうであるように、気づかないことは罪である。

男には意識下にある、女性の受けてきた差別や被害の数々を

女性監督が厚化粧タッチの映像で表現した傑作です。

 

ただ、観ていてずっと居心地悪くて、決して好きな映画ではありません。

 

(2021/8/15 静岡東宝会館で鑑賞)