映画の事

「悪人」は誰なのか/映画「悪人」

傑作小説吉田修一著「悪人」を映画化し、 モントリオール国際映画祭で深津絵里が主演女優賞を獲得した、話題の映画「悪人」。 ずっと前から読みたかった本なので、映画はどうかなと思いつつ、鑑賞。 飽きることはなかったけれど、韓国映画のような凄みがなく…

アニメ色で描く心のひだ/映画「カラフル」

「クレヨンしんちゃん」シリーズや、名作「河童のクゥと夏休み」で、 揺れ動く少年たちの心を、情感豊かに描いてきた原恵一監督の新作アニメ。 「カラフル」は、魂のよみがえりを通して生きる意味を問う、珠玉の作品です。 天上と下界の間をさまよう魂{ぼく…

モンスターたちの復習劇/映画「告白」

日本映画の、今年最高の話題作で、大ヒットして続映中です。 見終わった後は、正直「凄い映画だ!」とは思ったのですが・・・。 「私の娘は事故死ではなく、クラスの二人の男子生徒に殺された。 少年法に守られている彼らに、私が裁きを下します。」 女教師…

もう一つの教育/映画「17歳の肖像」

殺人もなく、暴力もなく、性描写もなく・・・。 久しぶりに、まじめに、良識ある映画に出会えました。 映画「この自由な世界」にも共通する、イギリス映画の大人の味。 「17歳の肖像」は、世界共通のテーマ「教育(エデュケーション)」に真正面から取り組ん…

暴力で描く彷徨える魂/映画「息もできない」

「母なる証明」「チェイサー」に続く、今年3本目の韓国映画。 「息もできない」は、最近一番見たかった映画で、待ちに待って初日に鑑賞。 暴力の連続にうんざりしながらも、 主人公たちの熱い思いがヒシヒシと伝わってくる、痛いような映画でした。 友人が経…

B級ゲテモノ映画の話題作/映画「第9地区」

いわゆる低予算の、B級ゲテモノSFには違いないけれど、たいへん面白い作品です。 今年のアカデミー賞で「ハート・ロッカー」「アバター」と共に話題になりました。 南アフリカ共和国のヨハネスブルク上空に突如宇宙船が出現。 28年後、乗船していた100万…

これもまた、ヒーロー映画?/映画「ハート・ロッカー」

つい先日行われたアカデミー賞で、作品賞はじめ9部門をさらった話題作「ハート・ロッカー」。 静岡では、Movix清水で上映中、評判は上々で、結構混んでいました。 最近は刺激的な映画ばかり見ていたので、緊張を強いられる映画はつらい。 またか、と思いまし…

夜と雨と血と泥と/映画「チェイサー」

韓国映画の底力をまざまざと見せてくれる、怪作クライムサスペンス。 時代離れした純愛モノの対極にある、もうひとつの韓国映画の顔、猟奇スリラー。 あまりのハイテンションで、見終わった後、ぐったり疲れました。 風俗業で、客にデート嬢を斡旋している元…

アニメで描く戦争ドキュメンタリー/映画「戦場でワルツを」

映画の興味を引くものとして、その内容(ストーリー)が大部分を占めていますが、 それを、どういう表現方法で描いているかも、大変重要な要素です。 この映画は、戦争の真実を、アニメーションドキュメンタリーという、 独特の手法で描き、世界中で絶賛され…

愛と狂気の真実/映画「母なる証明」

初日だというのに、10人もいないガラガラの映画館。 こんなに面白い映画を見過ごしてしまうなんて。 日本映画がつまらなくなったのは、日本の映画ファンに見る目がないからデスッ!! 母一人子一人、子供のまま成人したような息子と、子を溺愛する母親。 性…

私の好きな映画・今年のベスト3

今年もあとわずか。 クリスマスの今日から、あと一週間で新しい年2010年に。 こどものいない我が家では、ミニカシコにエンジェルを飾って、Merry Christmas。 ウィーンの思い出が強く残って、好きな映画も、秋以降はわずか3本しか見なかった。 「ポー川のひ…

ふたつの世界を肯定的に/映画「サマーウォーズ」

お子様向け大作を作ることに囚われて、つまらなくなった宮崎アニメに代わって、 若者のこころをつかんだ、細田守監督。 前作の青春アニメ「時をかける少女」は忘れられない。 アニメ映画を見下していたオジサンが、何十年かぶりに胸キュ〜ンとなってしまいま…

ウソは罪?/映画「ディア・ドクター」

地方でくすぶる若者の屈折した心を描いた、日本映画の傑作「ゆれる」。 その、西川美和監督の新作「ディア・ドクター」を期待して見ましたが・・・。 村民に慕われる医師伊野(笑福亭鶴瓶)のもとに、ぼんぼん研修医相馬(瑛太)がやってくる。 看護師の大竹…

聞く喜びから読む感動へ/映画「愛を読むひと」

普段私たちは、文字を読み書き出来ることを、大したことと思っていない。 けれども本当は、文盲であった場合、その人の運命が狂ってしまう程、 残酷な事であることを、思い知らされる映画です。 少年マイケルは、偶然出会った年上女性ハンナと恋に落ちる。 …

男の夢の果て/映画「レスラー」

ベネチア映画祭グランプリ。 整形し、プロボクサーに転向した、俳優ミッキー・ロークがこの映画で再起し、 自身の姿を反映した凄まじい演技で、数々の賞に輝いた作品です。 子供の時にレスラーにあこがれて、プロレスの世界の門を叩き、 若さと肉体で、ホー…

1/4×○○回の選択/映画「スラムドッグ$ミリオネア」

人生とは「クイズ$ミリオネア」のようにスリリングな選択の連続なんでしょう。 でも、その醍醐味を味わえるのはゼロから出発した人間だけかもしれない。 インド・ムンバイのスラムで育った、孤児の兄弟サラームとジャマール。 少女ラティカと共に想像を絶す…

朝の牛乳のようなさわやかさ/映画「ミルク]

「希望がなければ、人生は生きる価値などない。だから、希望を与えなくては。」 主人公が暗殺されてしまう話なのに、こんなにもさわやかで、すなおに感動出来るのは、 この映画が最初から最後まで、「希望」というキーワードに貫かれているからでしょう。 19…

知のバトル/映画「フロスト×ニクソン」

今年のG.Wはシネギャラリーでアカデミー賞3作品を見よう! 「スラムドッグ$ミリオネア」「ミルク」「フロスト×ニクソン」。 いずれ劣らぬ、映画的興奮を味わえそうな作品群。 しかし展示会開催中の身、結局「フロスト×ニクソン」だけに終わりそうです。 ウォ…

究極のナルシストたち/映画「エグザイル/絆」

ハハハハハッ♪ 笑ってしまいました。 いまでもこういう映画があるんですね。 親分を殺そうとした男ウーを処分するミッションのために集まった男たち。 足を洗ったウーとその妻子をみて、使命を捨てる。 それも当然、彼らは子供の時から固い友情で繋がれた同…

お見事ですが・・・/映画「チェンジリング」

最近は、公開される映画すべてがベストテン上位に入る、 日本の映画評論家、ファンにきわめて受けのいいクリント・イーストウッド監督。 今回の新作「チェンジリング」も評価の高い映画でした。 シングルマザー・クリスティンは息子ウオルターとつつましく充…

甘ったれ男の人生/映画「ベンジャミン・バトン」

今年のアカデミー賞13部門にノミネートされたにもかかわらず、結局、 美術賞・メイクアップ賞・特殊効果賞の3部門受賞に終わった映画「ベンジャミン・バトン」。 しごく妥当な結果です。 ベンジャミン・バトンは80歳の姿で生まれた。 父に老人ホームの前に捨…

エイジレス・アイドル/映画「R.S. シャインアライト」

映画 『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』は、 ミュージカル「コーラスライン」再演のオーディションに挑む若者たちを追い、 映画「サ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」は、 年老いても枯れない永遠のアイドルを描いた、ともに音楽ドキュメン…

納棺は誰が?/映画「おくりびと」

映画「おくりびと」は公開当初、決して見たい映画ではなかった。 何か、感動の押し売りのような気がしたし、主役の本木雅弘も好みではなかったので。 ただ、世評はいいし(キネマ旬報ベスト1)、再上映があったので見てきました。 チェロ奏者、小林大悟はオ…

今年の映画・私のベスト5

映画好きにとって、年末はベストテンの時期となります。 私が今年見た映画は20本。 「スウィニートッド 」 「ラストコーション」 「スタンドアップ」 「アメリカンギャングスター」 「魔法にかけられて」 「潜水服は蝶の夢を見る」 「人のセックスを笑うな」…

I'ts a free world/映画「この自由な世界で」

あの、my best movie「ブロークバックマウンテン」がなかったら、 たぶん映画「麦の穂をゆらす風」がそれに変わっていただろう。 そのケン・ローチ監督の新作「この自由な世界で」も素晴らしい作品でした。 派遣会社を解雇されたシングルマザー、アンジーは…

自分への挑戦/映画「イントゥ・ザ・ワイルド」

いつの時代も、ピュアな心の青年が目指すのは荒野。 本の中の真実に酔いしれ、日常を逸脱していく。 「イン・トゥ ・ザ・ワイルド」は男の自分探し、自分への挑戦を描いた映画です。 裕福な家庭に育ち、最高の成績で大学を卒業したクリスが関心を持つのは、…

社会の闇と人間の闇/映画「闇の子供たち」

社会の闇と人間の闇/映画「闇の子供たち」

病める夫婦と時代/映画「ぐるりのこと」

展示会に追いまくられての毎日でしたが、 少し落ち着いたので、最近見た日本映画「ぐるりのこと」をupしました。 30代の夫婦の10年の歩みと、彼らをとりまく周りの世界(ぐるりのこと)を丁寧に描いています。 ずぼらで女好きのカナオ(リリー・フランキー)…

ヒース・レジャー賛/映画「ダーク・ナイト」

新しい「バッドマン」シリーズの第二弾。 けれど、タイトルにバッドマンはない。 ダークナイト(dark knight・暗黒の騎士)というバッドマンの愛称のみ。 破滅していく世界を眺めることに唯一の快楽を求めるジョーカー。 彼が悪行を行うのに迷いはなく、いか…

my best movie/映画「ブロークバック・マウンテン」

my bestシリーズ、三回目は映画「ブロークバック・マウンテン」のこと。 同性愛のカウボーイの出会いから真の別れまでの20年にわたるストーリー。 その間に、妻を裏切り、家庭を壊し、ホームレスになっていく。 アン・リー監督が哀惜の情をこめて社会の網か…