大人の嘘と子供のうそ/映画「ウェディング・バンケット」

先日、NHKBS2で中国の監督アン・リーの初期の作品が放映されました。

「推手」「恋人たちの食卓」「ウェディング・バンケット」の3本。

特に「ウェディング・バンケット」は、だいぶ前映画館で見た事があり、大変好きな作品です。



NYでアメリカ人サイモンとゲイライフを楽しむ中国人ウェイトンは、結婚話を進める両親に困って、

自分には好きな女の子がいて近々結婚するから見合いは出来ないと断る。

そんな人がいるなら、結婚式に参列すると両親が台湾からアメリカへやってくるので、

グリーンカードがほしいフィアンセ役の中国人ウェイウェイと、家主役で同居するサイモンは、

ウェイトンに協力して偽装結婚がばれないよう、何とか結婚式をやり過ごそうとするのですが・・・。

お節介にもNYでレストランを開いているかつての父親の部下が披露宴(ウェディング・バンケット

を買って出て、大混乱となるその中国式披露宴のすさまじい事。

徹底的に新郎新婦はコケにされて、最後は初夜の部屋まで友人が入ってくる始末。

そしてベッドインさせられた二人は酔った勢いもあって、あろうことか子供が出来てしまう。

ゲイのパートナーサイモンは激怒し、ウェイトンも困ってウェイウェイに堕胎を勧める。

一方、過労で父親が倒れ入院する羽目になるので、両親の滞在は長引き、3人の共同生活は

ぎくしゃくし始める。ウェイトンはついに母親に自分は同性愛者であることを告白するが、母親は

「お父さんは長くない。ゲイであることは内緒にして、ぜひ子孫のために孫を生んでくれ。」と懇願する。

また、ウェイウェイも育てるから二人に父親になってと主張する。

ところが、病気が回復し、そんな騒動を黙ってみていた父親は、パートナーのサイモンに向かって

「息子のことを大切にしてくれ。自分たちが知らない振りをすればすべて丸く収まる。」と英語で話しかける。

中国語しか解らないと思われていた父親の方は、英語の会話を聞いて3人の関係を全部理解していたのだ。

こうして3人の嘘と両親の知らんぷりの態度でめでたしめでたしとなり、

両親が帰国する場面で終わりとなります。

現実はこんなにうまくいかないと思うし、3人の将来も思いやられますが、

とにかく東洋的曖昧さ、寛容さに溢れた人情喜劇になっていました。



映画の話が長くなってしまいましたが、「こどものうそ」は曖昧にしてはいけません。

NHKの朝のドラマ「瞳」の中で、「養育家庭」をしている祖父が一人の中学生の里子を諭す場面。

高校進学をしたいのだが、里親にお金が掛かることを気遣って、自分は就職したいと言い張る中学生に、

「本当の事を言いなさい。人につくうそは結局自分にもつかなければならなくなる。」とうそをつくことを戒める。

ここでは「家族は偶然あるものではなく、真実を語ることで作っていくものだ。」というテーマが生きています。

嘘をつく事で丸く収まる家族と、嘘をつかない事で作り上げていく家族。

どちらも共感できるストーリーでした。

(画像はパンフレットから拝借しました。)