いのちの軽さ
アフガニスタンでペシャワール会の青年伊藤和也さんが拉致され、殺害された事件はあまりにも痛ましい。
中村哲さんが代表を務めるペシャワールの会は、
1980年代からアフガン難民のための無料医療を行い、何万人の命を救った。
また、中村医師は医療活動のかたわら、干ばつで砂漠と化した水田に水を引くため
日本人のスタッフと多くの現地人が協力して数百の井戸を採掘し、緑の大地の回復に力を注いできた。
(画像は干ばつで干上がった水田と、五ヶ月後、地下水路が出来、緑が復活した同じ場所の田畑)
数年前、中村哲さんの講演会が静岡であり、聞きに行ったことがある。
その頃、医師はあちこちで講演会に呼ばれ、ひっぱりだこ。
静岡へ講演に来た時も、疲れからか、新幹線で寝過ごしてしまい、
1時間以上も送れた講演会になったことを覚えている。
悲惨な状況を伝えるアフガニスタンの現状を描いたドキュメンタリーには泣けてしかたがなかったが、
中村さんの話は、時にユーモアをまじえ、朴訥と語りながらも、現地に住む人たちへの愛情に満ちていた。
その中村さんの一番恐れていた事が起きてしまった。
逮捕された犯人と思われるゲリラは20代の青年。
殺すか殺されるか、不幸にも人間殺人兵器として育てられたであろう。
彼に、伊藤青年のアフガン人に対する無償の愛は伝わらなかったのだろうか。
命の重さを認識することはあったのだろうか。
伊藤さんのやさしい笑顔の写真を見るたびに、中村医師がどんな思いでいるか、
ご両親の気持ちはいかばかりか、いたたまれない気持ちになる。
あらためて、中村哲さんの著書「医者井戸を掘る」を読み返してみたくなった。