病める夫婦と時代/映画「ぐるりのこと」
展示会に追いまくられての毎日でしたが、
少し落ち着いたので、最近見た日本映画「ぐるりのこと」をupしました。
30代の夫婦の10年の歩みと、彼らをとりまく周りの世界(ぐるりのこと)を丁寧に描いています。
ずぼらで女好きのカナオ(リリー・フランキー)と几帳面でしっかり者の翔子(木村多江)。
子供の死産をきっかけに、精神を病んでいく妻と、戸惑いながらも支えようとするけなげな夫の愛の姿。
なんていうと、どんな感動的な映画だろうと思うでしょう。
けれど、夫婦の事となると結構下ネタっぽい話が多く、失笑してしまいます。
夫の同僚や、夫婦の親戚などぐるりの人も一癖も二癖もある人物ばかり。
さらに時代背景には、法廷画家として裁判の被告を描くカナオが拘わる事件がかぶさってきます。
幼児誘拐殺人やオーム事件を思わせる陰惨な事件の被告人ばかり登場し、ギョッとします。
病める夫婦と、二人が歩んできた病んでいる時代(今)がオーバーラップします。
困難な状況を乗り越えていく夫婦の愛の物語がテーマとなっています。
もちろん、2人が真正面から向き合おうとする事で、夫婦に揺るぎない絆を与え、
安定した精神状態をもたらすことは間違いありません。
ただ、カナオの画家(仕事人)としての成長や、天井壁画に打ち込むことで蘇る翔子の精神の再生は
むしろ個々の中での問題なのではないでしょうか。
いや、他人との関係、自分自身との関係のバランスがうまくとれている時が幸福なんでしょうね。
何もなければ面と向き合う機会の少ない者にとって、こういう夫婦の話は生々しいですね。
いい映画だとは思いましたが、「ぐるりのこと」は繊細すぎて、少々疲れました。
私には、ゲイのカップルに割り込む革新的な女性が登場し、新しい家族の誕生を予感させた
(画像は「ぐるりのこと」オフィシャルサイトよりダウンロードしたものです。)