文楽の醍醐味
静岡へやって来た文楽。
私は昼の部を鑑賞したのですが、演目が素人でも判りやすい人情物と、スペクタクル。
期待に違わず、会場は大喝采でした。
最初の演目「一谷嫩軍記」は平家物語から題材を採った話です。
源氏の武将熊谷直実が一谷の合戦で、平家の若武者平敦盛を討つ有名な話。
しかし、こちらは原作の平家物語を自由な解釈で浄瑠璃用に脚色したものです。
直実が討った敦盛の首実検を主君源義経の前で行うのが「熊谷陣屋の段」
直実は義経の制札に従い、敦盛のかわりに自分の息子小次郎の首を差し出す。
天皇の血筋である敦盛を殺してはならぬ、という掟を守らなければならない運命。
それを知った直実の妻相模は,小次郎を失った悲しみに打ちひしがれ、
また、直実も世の無情を感じ、武士を離れ出家していく。
息子の首を抱く場面、相模を演じる人形師吉田簑助の控えめな感情表現。
豪壮な出で立ちで登場しながら、最後は仏門に入る直実を操る桐竹勘十郎のメリハリのある演技。
そして浄瑠璃太夫は時に怒り、時に泣き叫び、物語を伝えなら見る人の感情を揺する。
人形の動きと語りに寄り添い、喜怒哀楽を表現する三味線の音色の多彩なこと。
文楽は「世話物」に限ると思っていましたが、今回は「時代物」の面白さを堪能しました。
後半は人形が空を飛ぶ、ダイナミックな「紅葉狩り」。
平継茂が奥山に入り、もてなしにあった美しい更級姫が、実は鬼女だったという話。
姫の扇の舞の場面、武者と悪鬼の対決場面では、アクロバティックな人形の動きに大喝采。
文楽は浄瑠璃、三味線、人形と三位一体となって演じられる日本の舞台芸術。
世界中で人形劇がここまで奥深く人間の物語を演じる例はないそうです。
そして色々な創意工夫があり、決して、難しかったり、退屈だっりしません。
歌舞伎もそうですが、庶民が楽しむ大衆芸術であることを改めて知らされました。
(画像はパンフレットより借用しました。)