映画「おくりびと」は公開当初、決して見たい映画ではなかった。
何か、感動の押し売りのような気がしたし、主役の本木雅弘も好みではなかったので。
ただ、世評はいいし(キネマ旬報ベスト1)、再上映があったので見てきました。

チェロ奏者、小林大悟はオーケストラが解散し、職を失い妻と共に故郷へ帰る。
知らないうちに就いた仕事が納棺師。
彼は戸惑いながらも、感動的な納棺の儀を経験する内に、仕事に誇りを持つようになる。
最初、偏見の目で見ていた妻や友人も、次第に彼の姿に共感を覚えるようになる。
何もいうことはありません。
第一級の国民的文化映画と言っていいでしょう。
ノミネートされたアカデミー賞でも、ぜひ外国映画賞を取って欲しいと思います。
亡くなった人が、残された者にとって、もっとも美しい姿でいて欲しいと思う気持ち。
だから、納棺師というあまりやりたがらない仕事がこんなに感動的なんでしょう。
ただ、本来は、死化粧を施し、納棺するのは身内の者が行っていたんですよね。
最後、自分を捨てた父に死化粧をするうちに、親子の情愛が蘇ってくる場面が素晴らしい。
この映画が優れているのは、その儀式が職業ではなく、
おくりびととして当然すべきことなんだと暗示させるところ。
さて、私たちは愛する人が亡くなった時、自分で納棺の儀が出来るでしょうか。
その時、映画でなく、本当の感動が自分の中に沸いてくるのでしょう。
(画像は「おくりびと」公式HPより借用しました。)