ウィーン・ア・ラ・カルト「宮殿編」

ウィーンは、欧州の背骨ともいわれる、ハプスブルグ家の本拠地です。 ホーフブルグ(王宮)、シェーン ブルン宮殿、ベルヴェデーレ宮殿、と3つの宮殿を巡りました。


ハプスブルグ家の家臣、オイゲン公の夏の離宮で、今は美術館になっています。 何でも世界10大美景の1つとか。(これで10指?) クリムトやエゴンシーレなど、19、20世紀の絵画を展示する上宮、 バロック美術を展示する下宮があり、その間を美しい庭園が結んでいます。


なんと言っても、クリムトの「接吻」にお目にかかりたいので、私たちが入ったのは上宮のみ。 クリムトの部屋がハイライト。(画像はクリムト画集のベルベデーレ宮2010年度カレンダー) 「接吻」は、縦横1,8mの大きさで、ルーブルの「モナリザ」同様、これのみガラスケース入りになっています。 背景の金箔の厚さ、肉感的な男女の表情、日本の屏風絵から影響された平面的な構図。 この絵の官能性、全て、実物をみて初めて納得しました。 しかし、クリムト、エゴンシーレの陰に隠れて、私もウィーンに行くまで知らなかった画家の絵こそ、 もしかしたら、ベルヴェデーレ宮最高の問題作ではないか、と思ったのが、 リヒャルト・ゲルストル作の「笑う自画像」。


ユダヤ系の富豪の家に生まれ、、作曲家シェーンベルグの奥さんと駆け落ちして失敗。 クリムトに敵意を抱き、彼の個展を妨害。 そして、なんと「笑う自画像」を仕上げた後、わずか25歳で自殺。 破滅的な男の人生が、この絵の不敵な笑いに集約されているようで、ぞっとするような作品でした。


シェーンブルグ宮殿
ハプスブルグ家の夏の離宮。 ウィーン郊外、といっても中心部より、地下鉄で数駅の所にあります。 まあ、パリのヴェルサイル宮殿の小型版といったところでしょうか。 マリーテレジア、フランツ・ヨーゼフ1世エリザベートが過ごした40室を回遊します。 「鏡の間」「漆の間」、ウィーン会議が行われた「大ギャラリー」等、 ため息がでるほど、ゴージャスな空間が続きます。 団体客が多く、数珠つなぎになって見学するのが興ざめですが、 12.9ユーロのチケットに付いてくる、日本語のイヤホンガイドは、親切でありがたい。 さすがに、ウィーン№1の人気処、サービスが行き届いていて感心しました。


ホーフブルグ(王宮)
ハプスブルグ家歴代の居城。 新旧王宮、庭園、教会、国立図書館など、すべてがギャラリーとして解放しています。 特にフランツ・ヨーゼフ1世の部屋、皇后エリザベートの博物館「シシー・ミュージアム」が人気。


残念ながら、それほと王宮建築に興味がないので、朝の散歩で回りをぐるりと一周したのみ。 肝心の内部を見学する時間がありませんでした。 王家のあるところ、文化は栄えるといったところでしょうか。 いつ抹殺されるかわからない不安をかかえた、贅沢三昧の暮らしの中に、 皇族の栄枯の歴史と、一抹の夢を見る思いの宮殿めぐりでした。