ウィーン・ア・ラ・カルト「美術館編」

歴史を経てくると、その国の優位性を示すものとして、 武力ではなく、文化度の高さが重要になってきます。 オーストリアの帝都ウィーンには、文化の薫り高い美術館が散在しています。


今世紀にオープンした、複合アート施設MQ(ミュージアム・クォーターウィーン) 広場にある、遊具のような椅子がたいへん楽しい。 昼寝をしたり、食事したり、多くの人が休憩しています。
レオポルド美術館


広いMQの一角にある、大理石のモダンな建物「レオポルド美術館」。 今回のウィーン旅行で、もっとも気に入った美術館でした。 世紀末美術の作家のコレクションで有名な美術館。 なかでも、エゴン・シーレの最多のコレクションを誇っています。 エゴン・シーレという画家、名前こそ知っていましたが、 ウィーンにきて、これほど魅了された芸術家はありませんでした。


見る者に対して、自らの存在を誇示するかのような、強い輪郭を持った線。 にもかかわらず、一瞬にして崩れてしまいそうな、もろさをもった対象物。 短命であった天才の、描かずにはいられないエネルギーと凄みが、どの絵からも見られます。 ユダヤ人の財力で花開いたといわれる世紀末芸術。 しかし、エゴン・シーレやリヒャルト・ゲルストルの絵を見ると、 流浪の民である彼らの、宿命的な暗さと悲しみが、直感的に感じられてしまいます。
美術史美術館


ウィーンを代表する歴史的美術館。 ハプスブルグ家の膨大なコレクションを見ることが出来ます。 特に、ブリューゲルの部屋が人気で、農民達の日常を描いた、暖かい絵に癒されます。


多くの宗教画や、貴族の肖像画に食傷気味の、私のお気に入りは、 アルチンボルドの奇妙な肖像画の連作「夏」「冬」「水」「火」。 動物や農産物、さらには大砲などで、人物の目、鼻を描いた、不気味な男の横顔の4作です。
クンストハウスウィーン


「ウィーンのガウディ」と言われた、建築家、美術家のフンデルト・バッサー。 彼が、トーネットの工場を買い取り、独自の美意識で改造した美術館。 リングの外の、下町のアパート街に一際目立つ建物で、若者に人気があります。


「自然界に直線なるものはない。」がもっとうで、床は波打ち、階段は螺旋状。 モザイクをちりばめた様な、カラフルな彼の絵が多く展示されています。 抽象的に描かれた、人物の心象風景、自然描写など、 見事な色彩感覚の中に、彼独自の世界があり、すっかり魅了されてしまいました。 なお滞在時、日本の無名のアーティスト達の特別展があり、 案内人に進められて見ましたが、こちらも興味あるものでした。 街全体が美術館といわれる、ウィーン。 本や、映像では分からない、五感で体験出来るありがたさ。 この街にいるだけで、現代から古代までさかのぼり、 ヨーロッパの歴史を学び、体験することが出来ます。