老舗のほころび

週末に、東京で暮らしている娘の身の回りの整理のため、家族で上京。

不用の物を車に積んで帰省する前、夕食でもということになりました。

世田谷の私鉄沿線の、小さな商店街で、適当な食事の場所を探す。

いわゆる、ファミレス、チェーン店はイヤなので、

出来るだけ専門店、老舗らしい構えの、寿司がメインの和食店に入る。

「にぎり膳を3つと、桜(にぎり寿司の愛称)を1つお願いします。」

やがて持ってきたのは、にぎり膳4人分。

そして、天ぷら汁椀のなかには、髪の毛が・・・。

「すみません、取り替えます。」

パートらしき女性は、確かめもしないで、持ち去る。

箱膳の寿司は、店の門構えと裏腹に、回転寿司並みのネタと味でした。

続いて寄った、創業40周年の老舗らしいコーヒー専門店。

オーナーが、新人らしきアルバイトの女の子を、あれこれ指導中。

新人が注文を取りに来たが、メモしない。(大丈夫かな?)

やがて持ってきた、コーヒーカップの配膳の仕方に唖然。

位置を動けばいいのに、同じ所から遠くへ手を伸ばすので、カップを落としそうでハラハラ。

さらに、持ってきたケーキは、またも、注文とは違うモノ。

それなりに美味しいコーヒー。

でも、モカとキリマンジェロが、濃さの違いこそあれ、同じ味でした。



老舗とか、専門店の良さは何でしょう?

価格主体のチェーン店にない、個性ある上質の味と、店の雰囲気の良さ。

ホスピタリティ(おもてなし)が売り物ではないでしょうか?

「東京では、よほどのお金を出さないなら、チェーン店の方がましだよ。」

確かに、同じマニュアルで味気ないけれど、こんな初歩的なミスはさせないでしょう。

東京に慣れている娘の言葉に、この時代、この場所で、老舗がやっていく難しさを感じました。

「他山の石」・・・。

価格に代わる何かがなければ、振り向いてはもらえない。

お客様ひとりひとりに、満足してもらうモノがなければ、二度と来てはいただけない。

家具に携わる自分の姿を、2つの現場で見るようでした。