技術は語る/吉蔵の家具プレビュー(2)

KAGUメッセまで、あと5日。 木工現場で板取り補助をしているとき、私の目が行ってしまう所。 傾斜版でカットされる木材を、鋸の歯のギリギリと所で離す指先。 調整しながら、徐々に組まれてゆくほぞの一点を見つめる目。 カンナを一気に挽くときの、動きのぶれない腰。 年期の入った職人さんの無駄のない動きは、実に美しい。


たとえば、島桑指物のポイントとなっている紐(ひも)と言われる面。 単調な抽出の表情を引き締めるため、桑の薄板を抽出の回りに取り付けます。 天板の丸みに平行して、薄板を曲げるのは至難のわざですよ。 たとえば、蛇腹の面が不自然なく組み合わさるように考えられた、剣先留めのほぞ。 棒の先が剣のようになって、相手の棒の腹に突き刺します。 シャープで無駄のない線を自然に納めるのも、高度な技術です。


優れた職人さんは手仕事なら何時間もかかる細かい細工を、いつまでもモタモタやっていない。 工具や機械を駆使して、いとも簡単にやってのける。 その人独自の知恵と、磨かれた技をもって仕事をしている人が強いのです。 高度な技術が必要な部分を、サラッとやり遂げてしまう、すがすがしさ。 自慢げに、至る所に技術のあとを見せることを嫌う、粋の良さ。 見えない所に、職人さんの愛情が籠もっている、奥ゆかしさ。 細部に宿る技術が、家具全体に気品と味わいの深さを生み出して行くのでしょう。 どうぞ、KAGUメッセの「吉蔵ブース」にお出かけ下さい。 そして、「吉蔵」の家具の中に、ほんの少し感じ取っていただけたら、さいわいです。