静月庵にて炉開きを楽しむ

二ヶ月に一度の割りで、茶会を楽しむグループ「遊子連」。 今年でもう、10年になります。 それを記念しての、今月の茶会。 駿府公園内にある。紅葉山庭園「静月庵」にて催されました。 久しぶりに私も和風スーツに身を固めて、妻や友人と共に出掛けました。


さて、ご存じとは思いますが、茶の湯の世界ではこの時期が年の替わりで、 茶人の正月と言われます。 風炉を閉じ、炉を開くいわゆる「炉開き」の儀式を行います。 茶壺の封を切って、その年の新茶を初めていただく「口切の茶事」を行う場合もあります。 今年の11月9日は、旧暦の十月四日で、 月日に十二支を当てはめていくと、亥の月・亥の日に当たるそうで。 その亥の月・亥の日に、茶家では、風炉を閉じ、炉を開くのだそうです。 「遊子連」もこの慣習にのっとり、炉開きで新しい年を祝いました。


待合いでいただくそば茶で身を温め、いざ茶室へ。 点々と灯る露地行灯に道案内されて、水音が響くつくばいで手を清める。 薄明かりの向こうに見える、茶室のにじり口をくぐり、礼をして床の間を拝見。


床の間には、炉開きになくてはならない椿が一輪、清楚な姿でお出迎え。 掛け軸に一筆、「鳥啼山 更幽」 (鳥啼いて、山更に幽なり) 鳥の一声が、更に山の奥深さを象徴する漢詩です。 炉開きと記念茶会にちなんで、先ずは濃茶の振る舞いの儀。 黒楽茶碗を、3人で受け渡ししながら、深緑のねっとりした茶を回し飲みをする。 主菓子の甘みと、濃茶の苦みがほどよくブレンドし、口の中が清涼感で満たされる。 続いて二服目。 干菓子をいただいた後、それぞれ趣の違う茶碗で、薄茶をたしなむ。 「おさきに。」 「ご相伴させていただきます。」 「お手前頂戴いたします。」 主人と客人同士の挨拶と、和やかな会話。 日本の茶の文化の、もてなしのこころが随所に感じられる、至福のひととき。 闇の中に浮かぶ灯りも弱まり、夜が静かに更けていきました。