死に甲斐を生み出す人々/映画「エンディングノート」
今年最初の映画鑑賞。
話題のドキュメンタリー日本映画「エンディングノート」。
淡々とした中にもリアリティある日常が描かれていて、とても良い映画でした。
会社を引退した営業畑のサラリーマンが、検診で末期のガンを宣告される。
限りある生きる時間を自分でデッサンし、エンディングノートの製作に取りかかる。
その彼の姿を、映画畑の娘が死の直前までカメラに納めて、
一編のノンフィクション映画にした。
この映画、もう亡くなっている主人公の「私」が、私の物語を
監督でもある娘の声のナレーションで語っていく、というユニークなスタイル。
そのおかげで当事者には辛い話も、見る側にとっては世間話のような軽いタッチです。
自分でなんでも出来る人は、きっと自分の死まで演出したくなるのでは。
だんどり君は、この世からいなくなるまで、まわりのお世話や指示をしたくなる。
それが滑稽でもあり、なんか気の毒でもあったり。
喜怒哀楽を表に出すことを良しとしない、慎ましい典型的な日本人の姿。
まるで他人事のようでもあり、自分の事のようでもあり、身につまされました。
まだ病を客観的に見ることが出来る中盤までは、こちらも笑ったり微笑んだり。
それが、息子家族が帰省してからの終盤は、一編のドラマのようで息をのむ。
最後の、夫婦だけの会話がこの映画のハイライト。
「愛してるよ。お前と一緒でよかった。ありがとう。」
「あなたに何も出来なかった。ほんとうにごめんなさい。」
どんな名優でも言えない、真実の会話で、ほんと泣けてきます。
死のことを真剣に考えた事はありませんが、
彼のように「死に甲斐」を求めて、終活を実行しようと思えるでしょうか。
絶体絶命の時にさえも、自分を見つめる冷静な心が保てるでしょうか。
この映画は、誰もがその可能性があり、行動するものだと語っているようです。