先を見て、段取り決めて、すぐ実行。
正月が明けて、仕事始めに職人さん回りをしたときのこと。
Nさんの作業場の機械や物置の配置が変わっていた。
「あれ?」っと思って聞いたら、
「若い人が新年から正式に仕事をするようになったので、居場所を作った。」
一人の時と二人では動く動線が違うので、年末から年始に掛けて大移動したそうだ。
私は作業場を見渡した後、今年最初の本題に入った。
まず、年末に依頼されていた数点の厨子の修理の件。
僅かだけれど、細かい部分が不具合になっている。
私はそのひとつひとつの修理箇所を説明していった。
Nさんは要点を聞くと、間髪を入れず1つ目の厨子を持ち上げ、
問題の箇所を点検し始めた。
・角がつぶれている
→まずその部分を湿しアイロンで木の繊維を脹らませる。
・木の一部が無くなっている
→同じ材の木の一部をソコに埋め、接着剤で取り付ける。
・扉がピタッと閉まらないで反発する。
→回転軸を調整し、本体と扉のマグネットの位置を再確認。
それから、それから・・・・・・。
それぞれの厨子を並べて、順序立てて手直しをしていく
私も丁度、手術中の助手のように、その都度必要な道具を差し出す。
「メス。ガーゼ、ライト!」ならぬ「ノミ、ドリル、ペーパー!」のように。
私は1週間の余裕を見ていたが、1時間も掛からずあらかたの厨子の修理が終了した。
そしてジャッキなどを必要とする手間のかかる修理も二日後には完了。
初荷の出荷と同時に、修理分も取引先に送ることが出来た。
その、手早い仕事の進み具合に、この職人さんのセンスの良さを再確認した。
今、リニュアルした作業場で、Nさんと若者のT君が黙々と作業をしている。
再び訪れた作業場の空気はいままでとちょっと違っていた。
きびきびと、てきぱきと、緊張感すら感じられる。
こちらも用件を言葉だけでなく、文章にして絵を描いて、的確に解りやすく説明する。
そんな雰囲気が新しい年の仕事の現場に流れ始めている。
正月後半になり、新規の注文も徐々に入り始め、私も仕事の手順を考えている。
いいチームワークが出来れば、いい仕事の環境が生まれる。
いい環境のなかで、いい仕事をしたい。
「先を見て、段取り決めて、すぐ実行」
何か今年は大きな前進が出来そうな、そんな予感の日々を送っている。