ビジネスの源は学びのなかにあり。

先週、数年前から取引を始めたある社長さんが、我が社にいらっしゃいました。

出張の帰り、新しい商品について相談したいから、静岡で下車するとのこと。

会社のショールームで打ち合わせているうちに、

私は、この社長さんの話にぐいぐい引き込まれていきました。

従来の厨子と、その厨子を載せる厨子台。

そこまでは、私たちも考え、現実的にそれらを製作したことがあります。

社長さんの仰有るのは、従来の厨子ではないスタイルの物。

いってみれば扉のないオープン型のタイプなのですが、

その製作意図を伺って、この社長さんの博識の深さにほとほと感心してしまいました。



内容はそれ以上お話しできないのですが、興味を持ったのが社長さんが持っていた本。

もう表紙も崩れかかって、それぞれのページには、ぎっしりとメモの跡。

使い古した鞄や財布のように、油染みたセピア色に輝いています。

その中の事柄をひとつひとつ丁寧に説明してくださいました。

神社の屋根のこと、柱のこと、須弥壇のこと、仏像のこと・・・。

「仏壇というものは、基本的に寺院建築をミニチュア化したもの。

 だから、古建築のイロハを知らなければ、作ることは出来ません。

 新しいタイプの厨子にしても同じ事。元を辿ることをせず、

 思いつきのデザインで製作しても、売り物にはなりません。」

位牌の形の元は? 

おりんの音程はどこから? 

唐式和式屋根の違いは?

私が尋ねるいろいろな疑問に、的確にひとつひとつ答えて下さる。

次第に見えてくるのは、

現代的なデザイン機能ばかり考えていて、本質を知らない自分の浅はかさ。

この時ばかりは社長さんの顔のあたりから、後光が差しているように思えました。

この古びた本、きっともう手に入らないだろうと思っていたのですが、

Amazonで調べたら、まだ在庫があるとのこと。

さっそく取り寄せて、日本の神社建築の意匠について、学び始めました。