還暦過ぎての手習いは何を?

先日、我が家のポストの中に一枚のチラシが入っていた。 「葵能楽塾開講・謡や仕舞のお稽古、始めませんか?」 お隣、番町市民活動センターにて、5月中旬に開催とのこと。


妻の影響もあって、結婚後は日本文化の薫り高い邦楽に興味を持つようになった。 「能」「歌舞伎」「人形浄瑠璃」「三味線」「琵琶」等々。 その中でも「能」を鑑賞することが一番長かった。 毎年最低1回は最高の能楽師が演ずる能を、上京して能舞台で鑑賞してきた。 魂の入った能の舞台は、何ものにも代え難い充実感と幸福感をもたらしてくれた。 そんな風に、はなから能は見る物と思っていたので、 まさか身近なところで、謡や仕舞をお稽古できる場があるとは思っていなかった。 たぶん、大勢の参加者があるから、取りあえず覗いてみよう。 ・・・と言うことで、昨日(5/13)行ってきました。 遅れていくと、会場の会議室にはナント男性の講師と10人弱の女性参加者がいるだけ。 ちょっと拍子抜けして話を聞いていると、 案内のチラシは1000枚摺って、近所と静大付近にポスティングしたそうだ。 それでこの人数? それでも先生はこんなに集まってくれるとは思っていなかったそうだ。


簡単な自己紹介と能の説明の後、まずは謡ってみようということで、 「鶴亀」の謡曲本を渡された。 「それ青陽の春になれば・・・」 先生の節に合わせて、反復していく。 能はどちらかというと一本拍子で、少しだけ長短高低の抑揚がつく単調な調べ。 だから素人には取っつきやすい。 ともかく、先生の指導で「鶴亀」の最後まで謡い切った。 流れるような文語体の文脈を追って、声を出すことは実に気持ちがいい。 この調子で、初級の5曲くらいを謡いなれるとすっかり能のとりこになるそうだ。 私は還暦後の手習いとしてもう一つ習ってみたい邦楽があった。 愛好者わずか3000人ほどといわれる、「琵琶」の世界。 その諸行無常の調べは。若い頃から私の心を捕らえて離さなかった。 幸い、こちらも静岡に素晴らしい指導者がいる。 いつかは・・・と思いながらここまで来てしまった。 「能」と「琵琶」。さて、どちらが我が伴侶として慰めていただけるか。 引退のない自営の身として、時間のかねあいを含めて、ただいま思案中です。