
中島義道著「ヒトラーのウィーン」 (新潮社) ドイツ時代と比べてほとんど資料に乏しいヒトラーの青年時代(それも17歳〜)。 美術建築に憧れ、片田舎のリンツからウィーンにやってきた青年の夢と現実。 美しき都ウィーンはヒトラーのグロテスクな怨念をどのように醸成していったのか。 中島義道氏はウィーンを第2の故郷と任じているほどのウィーンおたく。 けれども、それまでのこの都市に対する心の葛藤は、彼のウィーンでの生活を描いた、 中島義道著「ウィーン愛憎」(中公新書) 中島義道著「続・ウィーン愛憎」(中公新書) に詳しく描かれている。 大学は出たけれど・・・ウィーンに放浪の旅に出た中島義道氏の青年時代に繫がり、 空想だけが膨らんだ普通の青年の物語が、ここでヒトラーの青年時代と二重写しになる。 ヒトラーに関連した「浮浪者収容所」「独身者施設」「ブラゥナウ」など、 この本で氏は、普通の旅行では決して訪れることのない、影のウイーンガイドの ナビゲーター役を務めながら、青年ヒトラーを紐解いていく。 まだ、読み始めたばかりだけれど、再び私を夢のウィーンに誘ってくれる、 中島義道氏のプレゼントと思って、ワクワクしながらページをめくっている。