脱仏壇(だつぶつだん)宣言

我が「吉蔵」は今年で創業90年になります。

創業者「吉蔵」の代は伝統的和家具(茶箪笥・座鏡・針箱etc.)を。

父の代はドレッサーやサイドボードなど量産家具もありましたが、

高度成長の終焉石油ショックを経て、「島桑指物」など付加価値のある家具作りへ。

私の代になって、世界有数の造形美「李朝家具」に魅せられ、

日本人のための李朝スタイル家具を、との試みから、

李朝家具=吉蔵」のイメージが強くなりました。

そして現在。

数年前から開発した「仏壇」に代わる「厨子」なる祈りの家具が、

製作の中心となっています。

様々な展示会やコンペで、祈りの家具ニューウェーブを展開し、

いつの頃からか「脱仏壇」宣言とも思われる家具作りとなりました。



最近のお客様からの相談の中で、幾つかのエピソードをご紹介します。

Aさまの例

 ご主人が亡くなられて、遺族は仏壇が必要になりました。

 ただ、このご主人、無類の木工製作が好きで、家具も内装も自分でやってしまう。

 それならせめて、ご主人が作ったであろう好みの仏壇をとの依頼がありました。

 仏壇から内装まで、かなり個性的な仏間が誕生しそうです。

Bさまの例

 KAGUメッセで弊社ブースをご覧頂きました。

 昨年の東日本大震災を境に故郷を離れ、静岡に移住されたとのこと。

 仏壇は処分されたのですが、数点の御位牌を持ってこられた。

 御位牌はそのまま収めたいが、仏壇臭くないシンプルなモノを、と言うことで、

 内寸から割り出した、程よい大きさの厨子を製作させて頂いています。

Cさまの例

 こちらもメッセを見て来社下さったお客様。

 新築されて、モダンな和室を設けた写真を拝見しました。

 仏間は用意したのだけれど、仏壇は置きたくない。

 むしろ、その場所を利用して「和のしつらい」をしたい。

 「厨子・棚・花・器・香」などをバランス良く配置し、

 日本の美を表現できる場に出来たらと、お考えのようでした。

この様に、かつての仏間は今、住まい手の心の拠り所として再生される方向にあります。

「祀り方・偲び方・祈り方」が従来の仏壇とは違う方法で暮らしの中で変化しています。

「吉蔵」はこうした要望に答えるべく、

これからの「多様な祈りの場」を暮らし手の皆さまと考えていきたいと思っています。