村上春樹氏&橋本治氏からのメッセージ

今朝9/28の朝日新聞朝刊に、

期せずして、2人の同世代の日本の有名作家の寄稿が載っていた。



村上春樹「魂の道筋 塞いではならない」

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領土問題が実務課題であることを越えて、

国民感情」の領域に踏み込んでくると、

それは往々にして出口のない、

危険な状況を出現させることになる。

それは安酒の酔いに似ている。

安酒はほんの数杯でひとを酔っ払わせ、頭に血を上らせる。

人々の声は大きくなり、その行動は粗暴になる。

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しかし、賑やかに騒いだあと、夜が明けてみれば、

あとに残るのはいやな頭痛だけだ。

そのような安酒を気前よく振る舞い騒ぎを煽るタイプの

政治家や論客に対して、我々は注意深くならなくてはならない。

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安酒の酔いはいつか覚める。

しかし、魂が行き来する道筋を塞いでしまってはならない。

その道筋を作るために、多くの人が長い歳月をかけ、

血の滲むような努力を重ねてきたのだ。

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橋本 治氏「みんなの時代」

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「国民」という括りが日本の中から遠くなっているように思う。

竹島尖閣諸島の問題で、韓国や中国は「国民的な怒り」を爆発させているが、

今の日本にそういうものはない。

多くの人は彼の国の反日行動を見て、

「あの人たちはなんであんなに怒っているのだろう?」

とそのメンタリティを不思議に思うのではないだろうか。

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今や日本は「みんな」の時代に入っていると思う。

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「みんな」の結集はワンテーマでしか起こらない。

それ以上のテーマがあったら内輪揉めが起こる。

「細かいこといわないで、みんなの力を一つにしようぜ。」

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「みんな」は横からの呼びかけで生まれるもので、横並びのものだから、

実のところリーダーを持ちにくい。

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リーダーに必要なのは決断力と、同時に「みんなの声を拾い上げる力」で、

それは「みなと喧嘩をしても平気な信念を持つ」である。

「みんな」も政治家も、

もっと頭がよくならざるをえない時代が来ただけだろうと思う。

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両者とも、私たちと同じ、戦後アジアの平和への道筋を作ってきた団塊世代

「私たちが動かなければ。」

「あんた達、行動しろよ。」

という思いが伝わる、素晴らしい文章だった。