居住まい正して、声を前に/謡いおさらい会

昨年5月に、近くの市民活動センターで募集していた、

謡いと仕舞のおけいこ、「葵能楽研究会」なるもの。

能の経験のある妻に誘われて、何となく参加しました。

その後、月二回のおけいこに行ったり、行かなかったり。

そんな能楽体験が、「4月に発表会をやりますよ。」と言うことで、

今年に入り、何が何でも真面目にやるはめになりました。


謡う演目は、何と「土蜘蛛」のシテ(主役)。

病の床に臥せっている源頼光のもとへ僧が訪れる。

蜘蛛の話をして、千筋の糸を投げかけ消えていく。

頼光が斬りつけ、血の後が残っているので、

それを頼りに、家臣の武者達がが辿っていくと、山中に古塚がある。

その塚を破ると中から土蜘蛛の精が出てきて、戦いとなる。

やがて武者達はこの土蜘蛛を退治し、京へ戻っていく。

・・・・という武勇伝で、能の初心者向きの演目です。

前シテが僧、後シテが土蜘蛛、その二つを演じ分けます。

ただし、謡いの部分はたったこれだけ。

(僧)月清き。夜半とうも見えず雲霧の。掛かれば曇る心かな。

   いかに頼光、御心地は何と、ござ候ぞ。

(頼光)・・・・

(僧)愚かの仰せぞうろうや。悩み給うも我が背子が。

   来べき宵なりささがにの。

(頼光)・・・・

(僧)懸くるや千筋の糸筋に。

(頼光)・・・・

(僧)身を苦しむる。

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(土蜘蛛)汝知らずや我昔。葛城山に年を経し。土蜘蛛の精魂なり。

     なほ君が代に障りをなさんと。頼光に近づき奉れば。

     却って命を。断たんとや。

以上を能独特の節回しで謡って行きます。

音楽のような、語りのような、なかなかそういう言い回しは出来ない。

何度も何度もCDを聞き真似をして、先生と妻の特訓を受け、

何とかカタチになりました。


さて。本番。

和風スーツに身を固めて、扇を手にして、

声の限りに高らかに、僧と土蜘蛛を謡い切りました。

客席で聞いていた妻、

「さすが本番に強い。いままでで一番よかったよ。」

たとえお世辞でも、うれしいひと言でした。