よみがえりの技法に感動/映画「おみおくりの作法」

今年の1月2月は映画を見なかった。

毎年のこと、寒さ鬱症状で「インターステラー」も「TATSUMI」も

見る機会があったのに逃してしまった。・・・・残念。

3月になって嘘のように身体が軽くなってきた。

そして、今年始めて見た映画がイギリス映画「おみおくりの作法」


公務員ジョン・メイの仕事は孤独死した人を弔うこと。

誰も来ない葬儀を行い、故人の写真をアルバムにまとめていく。

この丁寧なおみおくりを無駄と見た区役所は彼の仕事を取り上げてしまう。

ある日、彼のアパートの向の住人が亡くなる。

ジョン・メイはこの男を弔う最後の仕事にそれまで以上に打ち込み、

遺品や遺族を捜してイギリス中を駆け回る。

未知の人々と関わっていくことで彼自身も新たな人生を歩み始める。

この映画を見て「公僕」という古い言葉を思い出した。

この言葉、決して公務員を見下しているのではないのでは。

私欲ではなく、公平なお金を頂いている事に対して、

最善の誠意を尽くしている主人公の姿が清々しい。

しかし、寡黙に無欲に人生を歩んできた彼が、

心ときめき人生が変わろうとした矢先に訪れる不幸。

皮肉にもそのあたりから日が差すように映画のトーンが色を帯び始める。

終盤、誰一人見送る人のない孤独死した男の娘が主人公の心を読み取る。

そして彼の行為がもとで、寂しいはずの埋葬に人が集まってくるようになる。

それだけで胸がジーンとしてしまうけれど、

さらなるラストの数分が、万感胸に迫り涙なくして見られない。

ただ、それが現実ではなくファンタジーとして描いたところが

映画の良さなのか物足りなさなのか、ちょっと迷う。

「情けは人のためならず」

ジョン・メイさん、

誰にも知られなかったけれど、あなたのこと万の観客が見ている・・・よね。