こんな夢を見た。

50年ぶりに再会した中学時代の恩師が主催している
文章講座に通って1年が経った。

著名な作家、川端の「雪国」や谷崎の「春琴抄」などを読んで、
皆で感想を述べ合い、最後に各自で感想文を書く。
そしてそれを先生が添削してくださる。
感想文を書く時間は残り1時間もないから集中して必死で書く。


さて、先日の文章講座のテーマは夏目漱石の「夢十夜」。
新聞に連載された10篇の夢の話が一夜から十夜まで続いている。
一部を読み合い、意見や感想を述べるのは従来と同じだけれど、
私にとっては初めての体験、感想ではなく夢の話を創作するのだ。


書き出しは漱石と同じ、「こんな夢を見た」から始める。
私の書いた夢は以下、実体験に基づく甘酸っぱい青春の話・・・。

 

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こんな夢を見た。          (杉山吉孝)    

ここは高校の教室。
ディベートの授業があり、4つの長机を正方形にして、
2人づつ椅子に座り、8人が順番に意見を述べていく。

僕の隣は由紀さんだった。
美しく聡明な彼女に、僕はひそかに憧れを持っている。
自分の番はまだ大分先だからどんな意見を言おうか考えていた。
そのうち組んだ足の裏に何かかすかにぶつかってくる物に気付いた。

トントントン・コツコツコツ。
何だろうと机の下に目をやると、
由紀さんのつま先が僕の足の裏を叩いているではないか。

本当? 彼女も僕に好意を持っていてくれたのか。
柔らかくリズミカルに彼女の鼓動が伝わってくるよう。
僕はすっかりいい気持になり、こちらからもお返しをしようと思ったが・・・。
トントントン・コツコツコツ。
何故か彼女の叩く音ばかりでこちらからは何も返せない。
トントントン・コツコツコツ。

返事のサインを送ろうと、懸命に足を動かそうとしていると、
そのうちボーっとした頭かはっきりしてきて、見えてきたのは娘の姿。

「お父さん、お父さん、早く起きて!」
娘の指が、私の鼻の頭を叩いている・・・。
ハッと気が付いて目が覚めた。