All the Things We Never Said / 日本映画「生きちゃった」(石井裕也監督)

胸に突き刺さるような映画だった。
日本映画「生きちゃった」 (石井裕也監督)

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最初から最後まで緊張の連続で目が離せないのは
「TENET」と同じだが、
あちらはアルゴリズム(時の転換)に、
こちらは翻弄されるパッション(愛憎)に。
幼馴染の3人組。うち二人は夫婦になっており、
女の不倫から離婚とトラブルを繰り返すが、
友達の男は中に入り、二人の相談相手になるほど
優しい(いや、そう装う)。
けれども、愛のない建前の生活を5年も無駄に
過ごしたという女が自由に生きようとした時から
3人の悲劇が始まる。
三角関係にありながら本音を隠して暮らす彼らの
半年ごとの変化を各章のように描いていく。
いつも3人と一緒だったその夫婦の女の子が
傍観者のようで、彼らを見つめる目が痛々しい。
女親が死に、取り残された子供は
これからどんな人生を送るのだろう。
それに気がついた男親は子供に向かい、
泣きながら本音を語ろうとするところで映画は終わる。
この映画は香港映画祭が出資し、
石井監督他ツァイ・ミンリャン監督などアジアの
6人の監督に同じ予算が与えられ、
「原点回帰、至上の愛」をテーマに作られた。
「生きちゃった」は「All the Things We Never Said」
というタイトルで海外で公開予定。
「TENET」は時の転換する事の難解さに戸惑ったが、
「生きちゃった」は人の感情の不可解さが
もう一度見ないと解らない。
最近の日本映画は韓国映画に負けていると思っていたが、
どうしてどうして、こんなに鋭い感覚の映画があったんだと
嬉しくなった。
(11/14 静岡シネギャラリーで鑑賞 11/26まで)