海外でこそ大受けしそうな映画 / 日本映画「いとみち」(横浜聡子監督)
人見知りな津軽弁少女の奮闘と成長を描いた青春ドラマ。
「いとみち(糸道)」とは三味線を弾く時に爪にできる溝のこと。
と同時に、よくある家族の物語を普遍的に描く事も成功して、
外国でもヒットしそうな魅力あふれる日本映画が誕生した。
主人公を演じる駒井連の本物の津軽弁とどんくさい表情。
実際の三味線の名手であるおばあちゃん役の西川洋子の
加えて田舎に染まらない東京出身の父(豊川悦司)の似非学者ぶり。
その他、監督俳優等、津軽のスタッフが結集し
青森でオールロケしているのでリアル感たるや半端でない。
特に丁寧に描いているのが父と娘と祖母の関係。
母亡き後、一緒にいても対話のない父娘を引き寄せる糸になり、
対立する時のクッション役をも務める祖母の存在。
後半、ようやく互いに向き合うようになる父と娘。
父は娘のアルバイト現場に出向き、娘は父の趣味の登山を一緒にして、
知らなかった互いの世界を共有することで近づいて行く。
そして、私は存在すら知らなかった「メイドカフェ」の面白さ。
東京の真似をすることが地方のビジネスが生きる道と居直る店長
や訳ありの二人のメイド仲間が主人公をしっかり支えている。
客は爺さんから若者まで、さらには女性グループまで
「お帰りなさい、ご主人様」と歓迎しているのだから。
それにしても最近の女性監督の活躍はすごい。
「素晴らしき世界」「あの子は貴族」「ノマランド」そして「いとみち」
全て傑作ぞろいでますます面白くなってきた。
けっぱれ、日本の女性監督!
(7/3 静岡東宝会館で鑑賞)