朧月夜を詠う 樋口一葉
おもふこと
少し洩らさむ友もがな
うかれてみたき朧月夜に
「朧月夜に浮き立つように、恋心を少しだけ話せる友がほしい。」
二十四歳で没した樋口一葉が、死の前年に作った歌だそうです。
日経新聞の夕刊<耳を澄ましてあの歌この句>に解説がありました。
文筆家として家族を養う貧しい生活のなか、一葉に真の友人はいなかった。
世間にも、恋しい人にも肩肘を張ってきた一葉が、春のあまい月夜に、
ほんの少し酔わされた瞬間があったのだろう。
このコラムの担当者、歌人の佐伯裕子さんは述べています。
3月末の満月(ブルームーン)が過ぎて4月は十六夜(いざよい)の月に。
桜も満開(フルブロッサム)から、はらはらと散り始めた春の宵。
天才にも凡人にも、貧しくても病んでいても、春はやさしく語りかけています。