朝の牛乳のようなさわやかさ/映画「ミルク]
「希望がなければ、人生は生きる価値などない。だから、希望を与えなくては。」
主人公が暗殺されてしまう話なのに、こんなにもさわやかで、すなおに感動出来るのは、
この映画が最初から最後まで、「希望」というキーワードに貫かれているからでしょう。

1972年サンフランシスコに移り住んだミルクは、恋人スコットとカメラ店を経営。
カストロ地区でゲイのコミュニティを拡げて行き、そののち市の市政執行委員に出馬。
落選を繰り返しながらも仲間を募り、社会的弱者の救済をスローガンに社会運動を進める。
1978年ついに当選し、リベラルなサンフランシスコ市長とともに、行政に取り組む。
ゲイバッシングの提案6号を否決に持ち込むが、同僚の凶弾に倒れ、48歳の生涯を閉じる。
これはゲイリブの話なんだけれど、
それよりもNGO(非政府組織)の誕生を描いた映画なんですね。
性的マイノリティは当時(いや、今でも)犯罪者や狂人としか見なされなかった。
そのため、逮捕して矯正するか、抹殺する対象だった。
政治も宗教も救ってくれない。
命がけで、NGOを立ち上げる事しか方法はなかったのです。
ハーヴィー・ミルクとその組織は、新しく変わっていく時代が必要としたのです。
だから、この映画は未知のものが誕生するワクワク感があります。
前向きで明るく、わかりやすく楽しく、輝きに満ちている。
この映画を作り上げる事だって同じ事。
スタッフやキャストも楽しかったでしょうね。

ただ、半世紀近く経った今でも、彼らの望む世界は遠いものです。
映画にあった提案6号(同性愛者の教師は解雇できる)は否決されたけれど、
最近の提案8号(同性結婚の否定)は可決されたようです。
日本でも「プライド・フェスティバル」という性的マイノリティの祭典が
この5月23日(土)に東京で開催されます。
ミルクの蒔いた希望の種は、それでも着実に育っているようです。
(画像はチラシとおしゃれなパンフレットより)