視覚こそ生きるすべて/映画「潜水服は蝶の夢を見る」

フランス映画「潜水服は蝶の夢を見る」は感動を超えて、見るものに生きる意味を強く問う映画です。



ファッション誌「エル」の編集長ジャン=ドミニック・ボビーは華やかな生活から一転、

脳梗塞(こうそく)で左目のまぶた以外の自由が効かなくなってしまう。

映画前半は意識を取り戻した主人公の目をカメラに見立て、病院の中を追う。

主人公の不自由さと苛立ちをズームやカメラのブレで表現した映像が続く。

後半は自らの病気と境遇を受け入れ、言語療養士のもと、

左目だけの20万回のまばたきで自伝小説を綴っていく様子を描くいていく。

妻と三人の子供たちと過ごした楽しい日々。最先端を行く仕事に囲まれた充実した生活。

それが一瞬にして無くなってしまう不条理をどう受け止めたらいいのだろう。

映画はこの残酷な現実を感動的なストーリーではなく、

彼の記憶や想像力が絵巻物のように流れる圧倒的な映像力で物語る。

ジュリアン・シュナーベル監督は画家出身。

溢れる色彩と凝ったカメラワークで、動かなくなった体の主人公の喜び悲しみを表現し、

映画でなければ味わえない感動をもたらしてくれる。

不謹慎かもしれませんが、タイトル、躍動的な音楽と実にウイットに富んだオシャレな映画だと思いました。

(映像は「潜水服は蝶の夢を見る」公式サイトよりダウンロードしたものです。)