カタログデザインの達人たち
マッケンジー邸や杓子庵で撮影した画像が、
その後我が社のカタログやリーフレットに使われて行くことになります。
予算の乏しいなか、ほとんどが家具を気に入って下さった方々の好意で進められていきました。

いずれカタログ作りの時に必要になるから、
名建築のなかで撮影しておいた方がいいと勧めてくれたスタジオ・ジーオの深沢カメラマン。
カタログ製作は、そのカメラマンの肝いりで担当したデザイナーの阪下昇氏。
後から知りましたが、彼は静岡のデザイン界で、すべての人に「師」と仰がれ、
「おやじ」と呼ばれる、もの凄い存在のグラフィックデザイナー。
「新日本軍手」を生み出し、グッドデザインを受賞した時代の寵児、
カクタスデザインの黒住政雄さんは彼のもとで働き、あらゆる物を吸収したそうです。
そして、堅苦しくなりがちな説明文を、
まるで随筆文のようなしゃれた言葉に置き換えてくれた人気のコピーライター、ちびさん。
我が社の家具の印象からデザインされたリーフレットは、
以前私たちが作ったものとまったく違っていました。
表紙は、家具のカタログとは思われない引き手金具とKICHIZOのアップ。
まるで、マッケンジー邸や杓子庵に住み、
私たちが作り出した家具に囲まれているような錯覚を起こさせるシーンの数々。
そして、暮らし手が語りかける幸福なひととき・・・。
コンクリートの街を離れ、草案ですごす週末。
サランバンチェアから畳に投げ出した素足の上で
たわむれる風、草木の香り、鳥のさえずり。
心地よい空気とコーヒーの湯気にはりつめていた心がとけ出す。
谷崎の本を片手にまどろむ午後、
体じゅうが安らぎとなつかしさを覚える。
わたしの隠れ家へ、ようこそ。
もう大分前ことで、カタログも部数がありませんが、
デジタル化が主流でなかった頃のなつかしい話です。