暗きより暗き道にぞ入りにける/能「鵺」

東京国立能楽堂は今年で創立25周年を迎えました。

特にこの秋からその記念公演が目白押し。

源氏物語千年紀記念・新作能「夢浮橋」がその頂点ですが、

今回は日程の都合で、11日(土)妻と上京し、世阿弥の傑作能「鵺」を鑑賞しました。



「鵺(ぬえ)」は頭は猿、尾は蛇、足手は虎という不吉な架空の鳥の名前です。

みかどの命を脅かす物として、源頼政に射殺され、亡骸は空船に入れられ、淀川に流されて行きます。

前シテは舟人の姿にかえた鵺の亡霊として現れ、旅の僧に語りかけます。

我が身の最後を語るうちに思いが募り、僧に救いを求めますが、苦しみながら闇に消えていきます。

後シテは鵺本体が現れ、天皇源頼政の武勲を讃えます。

そして、自分が流され、海中に落ちていく様を舞います。

敗者としての側からみたこの能は、無常観が漂う世阿弥独特の世界です。

結末に詠われる「暗きより暗き道にぞ入にける遙かに照らせ山の端の、月・・・」

和泉式部の歌を引用しているので有名になっています。

道成寺」「融」「清経」など、シテの浅見真州氏の能ばかり、ここ何年か絞って見てきました。

氏は「五番能」「三番能」など、今日ではあまり見られない様式に挑戦しています。

いつも真剣勝負の雰囲気が感じられるので、こちらもたいへん緊張します。

「鵺」は能としては舞が少なく、華やかさに欠けるので、少々寂しい気がしましたが、

今回も、重厚で、格調高い能(白頭でした)を見せていただきました。

(画像はパンフレットから借用しました。)