文化財に泊まる/落合楼村上

伊豆湯ヶ島温泉の名旅館「落合楼村上」に家族で宿泊しました。 本館、眠雲邸、紫檀の間宴会場、階段棟、玄関棟が国の指定文化財に登録されています。 建物、温泉、料理、もてなし、すべて第一級の旅館がここにありました。






玄関では彫刻家大塚亮治氏のわらべの創作能面が迎えてくれます。




部屋は本館一階にある楓の間。 10畳二間、4.5畳一間、リビング空間のホールがあり、まるでスウィートルームのようです。




夕食は霜月の膳。御先付から水菓子まで12種類のごちそう。 食事を十分堪能した後は、アールデコ風の書斎でくつろぐ。 琳派の豪華本に没頭していたら、「夏目漱石みたいな人がいる。」と外の声。 私のこと?




美しい朝食。湯葉入りの湯豆腐の美味しかったこと。 チェックアウトのあと、主人が文化財の館内を案内してくれました。




伊豆金山の所有者、足立三敏氏が昭和12年、財の限りを尽くして完成した「落合楼」。 現在木造では建設不可能といわれる108畳の「紫檀の間」始め、普請の確かさを感じさせる部分が随所に。 二十数種もある障子や欄間の組子の技術の高さ。 最高の職人を全国から集めた当時の建築技術がいかに優れているか、丁寧に解説をしていただきました。


一時閉鎖し、荒れていた旅館を平成14年に「落合楼村上」として再開したのが現在の当主村上昇男氏。 洒落たデザインの灯りや、優雅なしつらえの調度にみる心配り。 文化財としての伝統を受け継ぐとともに、私たち宿泊客に伝えるもてなしの数々。 翁の能面が従業員の皆さんの笑顔と共に、旅立ちを見送ってくれました。