甘ったれ男の人生/映画「ベンジャミン・バトン」
今年のアカデミー賞13部門にノミネートされたにもかかわらず、結局、
美術賞・メイクアップ賞・特殊効果賞の3部門受賞に終わった映画「ベンジャミン・バトン」。
しごく妥当な結果です。
ベンジャミン・バトンは80歳の姿で生まれた。
父に老人ホームの前に捨てられ、そこで黒人夫婦に大切に育てられる。
やがて、少女デイジーと出会い、恋に落ちる。
旅立ち、再会、結婚、子供の誕生と二人の人生は続く。
しかし、女は年老い、男は若返っていき、ともに生きる事が出来ないその運命。
この映画、「数奇な人生」とサブタイトルがありますが、
なんのことはない、姿が老人から子供になっていく以外、普通の人生です。
まず、死の床にあるデイジーが、娘に父ベンジャミンを語るという、
回想形式にしたことが主人公を矮小化している。
結局、ここにあるのは彼女が描いたベンジャミンにすぎない。
特異な生まれの男は、偏見差別をバネに、
自分で人生を切り開いていったかもしれないのに。
さらにこのストーリー、人生の実りある時期、壮年期がすっぽりぬけている。
いつまでたっても、精神年齢は子供(青年)のまま。
インドへ自分探しに行ったって何が生まれるのだろう。
マイノリティである自分に甘えた、主体性のない男の一生を延々3時間弱も見せられます。
美しく変わっていくブラビに目がくらみ、人生とは?なんて考えてしまうのでしょうね。
監督のデビッド・フィンチャー、前作の「ゾディアック」や「ファイトクラブ」の
不気味なセンスは何処へ行ったのでしょう。
特殊メイクだけが不気味でした。
(画像はチラシから借用しました。)