指物 old and new

「アーツ&クラフツ展」を見た後、東京谷中で開催されてる「江戸指物展」に向かいました。


春の彼岸の谷中界隈は墓参りの人出が多く、商店街もお祭り状態でした。 数坪の小さなギャラリー「木楽庵」も指物展に来た客で、大賑わい。 丹精込めた指物家具、調度を熱心に見ていました。 この「江戸指物展」、もう十年以上前から続いています。 百貨店や小売り店から姿を消した伝統的和家具が、唯一ここで生きています。


ただ残念なことに、私が初回の頃伺った時に比べ、職人さんは半減しています。 さらに、指物家具の花「島桑」「黒柿」などの銘木を使用した家具もわずかになっています。 そして一番驚くことは、東京という世界の最先端の都市にありながら、 いまのデザインとの係わりがまったくないと言うこと。 私は、いい家具とは、 価値ある素材 優れた技術 今のデザイン の三拍子が揃ったものだと思います。 幸い私たち工房「吉蔵」は、静岡という恵まれた家具の産地にあります。 和家具であっても、今のスタイルの家具を研究するライバルがあるおかげで 切磋琢磨し、現代の空間にあうデザインを模索しています。


たとえば、古典的な島桑の「飾り棚」がデザイナーの手によって、 「キャビネット」に生まれ変わりました。 トメの仕事、紐回し、脚部の処理など、伝統的な指物の技を使っています。 伝統は、革新のふるいにかけられて、さらに価値あるものになる。 価格だけが一人歩きし、伝承でしかないものは小さな世界に留まるだけでしょう。 博物館の中に残るだけの家具ではいけないと、私たちはいつも肝に銘じています。 指物吉蔵・春の室礼展」    会期  2009年4月10日(金)〜14日(火)   時間  午前10時〜午後5時    会場  しずぎんギャラリー四季  静岡市追手町1-13アゴラ静岡7F          電話 054-250-8778