民芸運動と三国荘/アーツ&クラフツ展(2)

アーツ&クラフツ運動は日本にも影響を与えました。 運動に感化された柳宋悦は日本、朝鮮で民衆による生活用具を収集し、 無名の工人の作り出した工芸品に美を見い出し、民芸運動へと広めていきました。


さすがに日本のアーツ&クラフツの部は展示品が多くあり、見応えがありました。 中でも柳や浅川巧らにより再発見された、朝鮮の磁器、漆芸、家具、民画は 厳しい時代に生まれた工芸品の悲哀の美が感じられ、魅了されました。


柳は宮本憲吉、河合寛次郎濱田庄司らと共に、蒐集品を東京博覧会に出展し、 濱田、河合のほか、黒田辰秋などの調度品が加わり、民芸館を形成しました。 博覧会に展示された総合的な住空間は、 その後、支援者の山本為二郎アサヒビール初代社長の邸宅「三国荘」に移り、 同志たちの集まる、民芸の中心的サロンとなって行きました。 少々気になったのは、その「三国荘」室内再現展示。 李朝王朝風の意匠や西洋の文化が各部屋に入り交じり、 その上黒田、河合、濱田ら個性の強い作家の作品がぶつかり合うように設えられた空間は、 さぞかし喧騒に満ちたものではなかったかと、想像されました。


著名人の作品も見応えがありました。 しかし、点数は少なかったですが、名もなき職人の丹精込めた作品に魅力が感じられた。 まあ、それらの作品は「日本民芸館」などで充分鑑賞することが出来ますが。 職人の技術とセンスの紹介、その辺りが民芸の尊さであり、 手仕事の再評価に繫がっていく、という印象を受けた展示会でした。 そして、なんの意識も抵抗もなく、繰り返されていく、私たち今の、衣・食・住の浪費。 これらの作品の内に籠もる、貴重な時間と空間をもっと大切にしたい。 そういう思いも感じる事が出来た展示会でした。 (画像はパンフレットから借用しました。)