世話物の傑作/文楽「曾根崎心中」

出張に行った際に、国立小劇場で「文楽」を見てきました。

いや、文楽に合わせて、上京したのが、正解かな。

無形の世界遺産に指定されている、日本古典芸能のビッグスリー

「能」「文楽」「歌舞伎」

若い頃は洋楽一辺倒だった私が、日本の古典に詳しい妻に影響されて、興味を持ったのが40代の頃。

どれも、ワクワクするほど面白くて、改めて日本文化の凄さを実感している訳ですが、

特にここ数年、仕事そっちのけで、上京してまで見たいのが、「文楽」。

その「情」の世界は、一度見たら、日本人のDNAが刺激されて、どつぼ状態になってしまいます。



しかも今回は、世界のシェークスピアと並び称される、近松門左衛門の傑作「曽根崎心中」。

彼の心中物の中でも、最も華麗な様式美に溢れ、色恋沙汰が絡んだ、世話物の代表作。

人気がある出し物で、チケットはすぐに売り切れてしまいました。

 平野屋の手代・徳兵衛は、好き合った天満屋の遊女・お初が忘れられず、

 主人に勧められた、姪との縁談を断り、結納金を返すつもりでいたが、

 悪友の九平次に、貸したつもりが騙し取られてしまう。

 義理も果たせず、世間の信用も失った徳兵衛。

 お初は、そんな男をかくまい、どこまでも一緒だと、手を取り合う。

 死を覚悟した二人は、真夜中、曾根崎天神森へ向かう。

  ♪此の世の名殘。夜も名殘。

   死にゝ行く身を譬ふれば。あだしが原の道の霜。

   一足づゝに消えて行く。夢の夢こそあはれなれ。♪

名調子で始まる、死出の道行きから、

脇差でお初の命を奪い、徳兵衛自らも命を絶つ幕切れまで。

浄瑠璃と人形は、一寸の隙もない、日本の美の世界を繰り広げていきます。

歌舞伎、映画、オペラ、漫画にアレンジされるくらい、有名な物語ですが、

やっぱり「文楽」で見るのが、純粋な色香が感じられて、満足しますね。

改めて、その浄化された愛の姿に、胸が震え、感動しました。