夜と雨と血と泥と/映画「チェイサー」

韓国映画の底力をまざまざと見せてくれる、怪作クライムサスペンス。

時代離れした純愛モノの対極にある、もうひとつの韓国映画の顔、猟奇スリラー。

あまりのハイテンションで、見終わった後、ぐったり疲れました。



風俗業で、客にデート嬢を斡旋している元刑事ジュンホのもとから、二人の女たちが失踪。

その後、同じ客から呼び出されたミジンに、探りをいれさせるが、

彼女も行方不明になってしまう。

ジュンホは女たちを捜しているうちに、たまたま車同士が衝突して男に出くわす。

青年ヨンミンがその客とわかり、逃げる相手を捕まえ、警察に引き渡す。

ヨンミンは、「何人も殺したが、最後の女は生きている。」と自白するが、遺体も証拠もない。

警察やジュンホの必死の捜索にも関わらす、女たちは発見されず、容疑者は釈放されてしまう。

観客には、事件の全貌が見えているのに、主人公たちにとって、事件は迷宮の中。

殺され損なったミジンを救うべく、頼りにならない警察を向こうに、ひとり奮闘するジュンホ。

その、不安や、怒り悲しみによって、人間性を回復していく姿に、心が打たれます。

一方、釈放後のヨンミンの陰惨な行動が、この映画のさらなる見所となります。

殺人を快楽とする彼の姿は狂気そのものですが、何故か悲しみに満ちている。

キリストや十字架を登場させ、神の前で人間の愚かさを描いている様にも思えます。

雨、夜、泥、血など、陰気でダーティな場面ばかりで、辟易しますが、

本性まるだしでぶつかり合う人物描写は、ときに滑稽でもありこの映画の魅力となっています。

冬期オリンピックでの韓国選手の活躍。

海外エレクトロニクス市場での韓国ビジネスの強さ。

こんな超ド級の映画を低予算で作ってしまう、韓国映画人のしたたかさ。

お隣の国のバイタリティには、本当に感心してしまいました。