ウィーン・ア・ラ・カルト「家具編」

美術、工芸品の宝庫である、ウィーン。 しかし、家具に関しても、素晴らしい歴史があることを知りました。


宮廷家具博物館
リング内の旧市街より少し離れたところにあります。 ほとんど人がいない静かな環境で、ハプスブルグ家代々の家具を見ることが出来ました。




まず、驚くのは、王宮などで使われていた家具、調度品の膨大な数。  箪笥コーナー、鏡台コーナー、椅子コーナーなど、アイテム別の展示。  王宮や、シェーンブルン宮殿の部屋を想定し、映画でその時代を紹介した展示。 さらには、中世から現代へと変わっていく家具のデザインをルームごとにコーディネートした展示。


クラシックからモダンまで、歴史の中で花開いた家具の数々にしばし時を忘れ、見入ってしまう。 それに、なんとここは、撮影OKなので、好きな家具を撮り放題。 パンフレットと共に、私の大切な家具財産となりました。


応用美術館(MAK)
家具、ガラス磁器製品、テキスタイルなど、歴代の工芸品から、現代の生活具まで。 また、工芸美術学校も併設し、総合的なデザインの殿堂となっています。


トーネットの椅子コレクションに代表されるユーゲントスティールの展示。 その前のわずかな時代に花開いたビーダーマイヤー様式のエレガントな家具調度の展示。 さらには、ヨーロッパ人好みの、日本など東アジアの仏像、陶器、漆器のコレクション。 アカデミックな空間の中で、一日ゆっくり過ごしたい工芸美術館です。 ミュジアムショップも楽しく、なんと日本のデザイン軍手も置いてありました。 レオポルド美術館の中にも家具展示室があります。 ヨーゼフ・ホフマンらのウィーン工房から生まれた家具の何と魅力的なことか。


さらには、ウィーン街中の家具ショップも充実しています。 その一つ、「マルクト」のガイドブックで紹介された「リヒターロー」も覗いてみました。 日本では見られない1920年代以降の名作家具がゆったりと展示されています。 また、地下にはアンティーク家具がずらり並んで圧巻です。


家具を工芸品として捉え、歴史をきっちり遺産として収める博物館、家具店があるウィーン。 建築や美術品の保存にはお金を掛けるが、家具はなおざりにされている日本の都市。 韓国に行ったときも思いましたが、改めて日本は家具文化に乏しい国だと思わざるをえません。 しかし、生活様式が変わっても、日本の伝統的な家具調度品をもう一度見直すこと。 日本人のスケール感と繊細な美意識を大事にし、若い人に伝えていくことが出来れば、 日本の家具の未来は、けっして暗くないと思います。