アニメ色で描く心のひだ/映画「カラフル」

クレヨンしんちゃん」シリーズや、名作「河童のクゥと夏休み」で、

揺れ動く少年たちの心を、情感豊かに描いてきた原恵一監督の新作アニメ。

「カラフル」は、魂のよみがえりを通して生きる意味を問う、珠玉の作品です。



天上と下界の間をさまよう魂{ぼく」が自殺した少年に乗り移り、彼を再び生き返らせる。

少年「真」はいじめを受けて、中3のクラスで孤立している。

さらに、母の不倫、好きな少女の援交を知って、生きる力をなくしている。

そんな「真」の現実を良い方向に向かわせ、死を思いとどまらせる事が、「ぼく」の使命。

いままで見えていなかった劣等生の早乙女、

うっとうしいだけの唱子ら同級生の本当の姿に「ぼく」は気が付く。

その、やさしくウソのない心を知り、彼らとの交友の中で「真」は生きる喜びを見つけていく。

1つの価値観でない「カラフル」な色を持っている、それぞれの人のこころ。

そして、その色が混じり合って、色々な組み合わせの関係が出来ることを信じる。

「ぼく」は、自分のアイデンティティに気付いた希有の魂。

彼を下界に連れて行く天使「プラプラ」のような、自分を知ることに失敗した魂もある。

蘇ることなくナビゲーター役を務め続ける姿は、多くの私たちを見るようでとても悲しい。

映画「告白」同様、中学生の心の「闇」を描いた映画。

でも「カラフル」は、さらにそこに「光」をあてることに成功している。

アニメでしか描けない方法で、現代人の心のヒダを見事に描いている。

こんな特異な世界も描ける日本アニメの水準の高さに、あらためて感服しました。