ウィーン・ア・ラ・カルト「教会編」

今回のウィーン旅行で、一番見たかった建築の1つが、「アム・シュタインホーフ教会」。 オットー・ワーグナー設計の、世紀末建築の代表作です。


          アム・シュタインホーフ教会  一般公開は、病院施設内の教会のため、土曜の午後3時からのガイドツアーのみ。 その時間に合わせて、ウィーン旧市街から、バスで西方面郊外に向かうこと約30分。 バスは2車両連結しており、カーブなど大曲しなければならず、大変そうです。


20世紀初頭、シュタインホーフの土地に精神病患者のために設けられたサナトリウム。 白い病棟が点在する、緩やかな丘陵地を上がっていくと、金色のドームが輝く教会が見えてきます。 ヨーロッパ伝統のゴシック建築ではなく、インドのタージマハルのような丸い屋根。 明るい南欧や、中近東の建築を思わせる、白い外壁。 そして、行くまで知らなかったけれど、建物の基壇となる部分は、 なんと、日本の城壁そっくりの、石組み構造となっているのです。


そう言えば、向かう道中に、松ぼっくりが落ちていていました。 そう、この教会は、日本の城のように、松の木に囲まれて立っているのです!


威圧的でない、明るく異国情緒に富んだ外観から、 4人の天使象を支える4本アーチ、その間にある3つの扉から中にはいると、 白を基調とした神聖な礼拝堂の大きな空間が広がっています。


正面には黄金の天蓋を備えた祭壇と、キリストの祭壇壁画。 左右の窓には、7人の聖人と天使を描いたステンドグラスの大きな窓。 ウイーン工房が手がけた木製の堅牢なベンチと告解室。


ガイドは1時間、ベンチにすわり、説教のような形でドイツ語で行われます。 内容は分かりませんが、時折見学者から笑い声が聞こえて、楽しい雰囲気です。 はるばる日本から来た私たちのために、ガイド役の事務長は、図録にサインをしてくれました。 この図録の費用が、教会修復のための石材1つを寄付する事になるそうです。 精神を病んだ人達の、心の解放と、歓喜となるよう配慮されたこの教会。 訪れた私たちにも、清々しく、敬虔な気持ちを起こさせる、素晴らしい空間。 ワーグナーの総合芸術としての成果を、ここに見ることが出来ます。