島桑の二月堂/pick up our works

「二月堂」という、たためる机をご存じでしょうか。 「ちゃぶ台」ほど、大衆的ではなく、「文机」ほど、文人趣味でない。 組み合わせる、収納するという、実用性を備えた、今でも人気の和家具です。


正式名は「二月堂食堂机」(にがつどうじきどうづくえ)。 東大寺二月堂におけるお水取りの儀式の折、僧坊が、食事のため使用した小型机が原点になっています。 間口三尺(90cm)・奥行き尺五寸(45cm)・高さ尺(30cm)が基本のサイズ。 現在では脚部の折りたたみ式が主流で、数台でもコンパクトに収納出来る。 集会の時使われる折りたたみテーブルなども、1000年前の二月堂小机が発展したものなのでしょう。 数ヶ月前、この「二月堂」を希望されたお客様がありました。 現在は、高松などの座卓メーカーが製作している量産品がほとんどで、 通販で、3〜4万で販売している二月堂を、よく見かけます。 「吉蔵」でオーダーし、例えば黄檗(きはだ)材で製作しても、倍以上の価格になります。 もちろん、クォリティの違いは明確ですけれど。


いろいろ打合せをしている内に、島桑材で出来ないかと言うことになりました。 脚部などは、黄檗材そのままでいいと思ったのですが、 経年変化で、島桑材と色合いが変わので、すべて島桑突き板で被せることにしました。 制作者側としては、こういう組み立て式の家具は、傷みやすいので、 便利ですが、特に、お勧めしません。 事実、我が家で大昔からあった二月堂は、何度も使用して、ほとんどタガが緩んでいます。 実用性と耐久性、軽さと強度は、矛盾する面も多いものです。 また、無垢材と合板材の長所と短所を説明し、すべて納得いただいてから、製作にかかりました。


今回のお客様は、島桑材の木目を気に入られて、二台ご注文されました。 並べて、三尺角の座卓としても利用したいそうです。 要望がなければ作ることはなかった、この世に3つとない「島桑の二月堂」。 大切に使って下さるそうで、たいへん有難く思っています。