孤独な時間、もっと必要。

最近、ある有名な作家さんから、桐箱を製作する注文をいただいた。

地元で桐箱専門に作っていた職人さんがやめてしまい、代わりに製作する人を捜していた。

全国に桐箱製作所はいくつもあるので、最初はそちらを勧めたが、

地元の職人さんがいいと言う。そこで、弊社が製作させて頂くことになった。

木彫の作品を収めるだけのもの、でも実際にサンプルを見ると、かなり凝ったものだった。

もちろん日本桐を使い、蓋にはくさびを入れて、反り留め防止してある。

製作に取りかかって二週間。

納品のため再度お会いしたとき、丁寧な仕事を褒めて下さった。



「いい職人さんは、じっくり納得するまで、現場を動かないものですね。」

「先生はどのように仕事をなさるんですか?」

「僕はねぇ、ほとんど家を出ないんですよ。

  引きこもって、いつも創作のことで頭がいっぱいです。

   自分はたぶん、あと○○年しか生きられない。

    だとしたら、○○個の彫刻しか、作ることが出来ない。」

     僕の事を待ってくれている人がいたら、

      余分なことを考えている暇はないのです。」

もちろん、この位の芸術家になると、マネージャー(画商)がいて、

ビジネスライクな話は、そちらが全部やってくれるらしい。

家にいても、あまたの情報がなだれ込んでくる時代。

自分から、創作する時間と空間を生み出していかなければ、手が動いていかない。

パソコンに向かってアンテナを高くし、情報をキャッチしている自分。

お客さま情報や売れ筋情報。

でも、本当にいい家具を創るために、自分自身と向き合っているだろうか。

孤独な時間をなおざりにしていないだろうか・・・。

先生はこんな事も言った。

「でも、営業の人は別ですよ。

 ビジネスマンは、常に外のことを考えていなければ・・・。

 家にいては仕事が出来ませんからね。」