亡くなってから注目された画家 リヒャルト・ゲルストル

国立新美術館の「ウィーン・モダン」展は概ね物足りなかったけれど、
ひとつ思わぬ収穫があった。

「リヒャルト・ゲルストルの油絵2点が展示されていた事」

ゲルストルの事は私がウィーンへ行くまで全く知らなかった。
ところが、ウィーンのいくつかの美術館で
クリムトやエゴンシーレの絵の中にあって、
強烈な印象を残した画家がゲルステルだった。

そのほとんどが肖像画や自画像。
しかもニコリともしないどちらかというと暗い顔ばかり。

そして最も強烈だったのが、あのクリムトの「接吻」が
展示されているベルベデーレ宮殿にあるゲルステルの「笑う自画像」

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口は笑っているのに、目は泣いているのか怒っているのか、
絶望的な表情がなんとも不気味だった。

彼の生き方が凄まじい。

裕福な商家に生まれた彼は画家を志し、ウィーン美術アカデミーへ入学。
ウィーン分離派に飽き足らず独自の絵画を模索し、特に肖像画や風景が多い。
音楽への関心が高く、シェーンベルグと親しくなり肖像画を依頼される。
しかしその妻マティルダと親密になり、
二人で駆け落ちをするも、女の方は夫の元に帰ってしまい失敗。
追い詰められたゲルストルは、25歳で自分の作品を燃やしてから首吊り自殺した。

当時は全く評価されなかったが、今では表現主義の代表的画家として、
クリムトやココシカらと共に、ウィーンの主要美術館に展示されている。

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今回の「ウィーン・モダン展」には有名な「シェーンベルグの肖像」と
もう一点、「パレットを持つ自画像」が展示されていた。
「シェーンベルグの肖像」は彼のピアノ曲を演奏するポリーニ
CDの表紙に使われているので見た人もいると思う。

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