朧月夜を詠う 樋口一葉

おもふこと 
    少し洩らさむ友もがな 
       
うかれてみたき朧月夜に

 

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「朧月夜に浮き立つように、恋心を少しだけ話せる友がほしい。」

二十四歳で没した樋口一葉が、死の前年に作った歌だそうです。
日経新聞の夕刊<耳を澄ましてあの歌この句>に解説がありました。

文筆家として家族を養う貧しい生活のなか、一葉に真の友人はいなかった。
世間にも、恋しい人にも肩肘を張ってきた一葉が、春のあまい月夜に、
ほんの少し酔わされた瞬間があったのだろう。
このコラムの担当者、歌人の佐伯裕子さんは述べています。

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3月末の満月(ブルームーン)が過ぎて4月は十六夜(いざよい)の月に。
桜も満開(フルブロッサム)から、はらはらと散り始めた春の宵。


天才にも凡人にも、貧しくても病んでいても、春はやさしく語りかけています。

 

 

オセローの思い出

シェイクスピア原作のオセロをSPACが公演した
宮城聡演出「オセロー」を観劇して、
思い出したこと・・・。


その1 

20代のころ、中央公論社から世界の文学という
ハードカバーの豪華本シリーズをいくつか購入した。
その第一巻がシェークスピアだった。

ハムレット」や「夏の世の夢」と共に
「オセロ」が収録されてあり、読んだ記憶がある。

老眼鏡でも目が疲れそうな小さな字で、
再読する気にはならないが・・・。

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その2

10代の学生の頃から映画好きだった私は、
ローレンス・オリビエが主演した映画「オセロ」も観た。

「静岡映画物語」の資料によると、1966年9月、
今はない七間町の「ミラノ」で公開された。

ナショナル・シアターの舞台をもとに映画化した作品で、
あくまでもオリビエのオセロが圧倒的なドラマだったと思う。

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その3

圧巻の「オセロ」体験は30代の時。
NHKホールで観たベルディ作曲の「オテロ」。
1989年にミラノ・スカラ座が初来日して、大枚はたいて東京まで行った。

オテロは黄金期のテノールプラチド・ドミンゴ
指揮はあのカリスマ指揮者、カルロス・クライバー

バーンと爆発音のようなフォルテッシモで始まる最強のイタリアオペラ。
勇者オテロが次第に自分のコンプレックスと嫉妬でタガが外れて
破滅へと向かっていく次第が、輝くばかりの音の競演で表されている。

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夢幻能が新しく蘇ったSPACの「オセロー」を観て。

シェイクスピア原作のオセロを夢幻能というスタイルで
SPACが公演した舞台を楽しみました。
能舞台のような装置、さらに
デスデモーナを主人公にした斬新な解釈の演劇でした。


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能の形式で言うと、
 シテ  「デスデモーナ」
 ワキ  「旅の僧」
 シテツレ「3人の女」

主人公のオセロやイヤーゴ、キャシオーetcは
能では中入り後の狂言が物語を説明する場面に、
寸劇のような形でそれぞれ俳優が演じる。

後場は旅の僧の夢の中に
デスデモーナの霊が現れ、
オセロと自分の最後を語る。

能にはよくある一人二役形式だが、
ここでもデスデモーナであるシテが
小道具を使ってオセロをも演じる。

囃子方も笛と打楽器(この場合、鼓はなくパーカッション)で
ワキツレの女優さんが加わる。

オセロのストーリーは知っているので、
むしろ能と現代演劇との絡め方がどうなっているのか。
そんなことばかり気になって、
能に詳しい妻に、いろいろ確認してしまった。

 

疑問?
 1 .能舞台の背面にある「松」をどうとらえたのか?
 2 ワキ(男の僧)を女優さんが演じたのはなぜか?

 

能ではないから大したことではないかもしれないが、
演劇素人としては少々気になったところ。
パンフレットにも触れてなかったので、聞いてみたい。

 

人生最良の日

facebookをscrollしていたら、ある文章講座の記事が目に留まった。
ブログを始めて物を書く楽しさを知るようになった私は、
興味を惹かれたので、続いてその詳細をtapした。

「スノドカフェ文章講座」 
 ーうたの系譜を探る・北原白秋

講師は〇〇あきを氏。
国語の先生、中学教師歴38年、柔道七段・・・・。
ずっと案内を読んでいくうちに、あれ?ひょっとしてこの方、あの人なんじゃないか?

△△秋男先生。
私が中学2年の時のクラス担任の先生。
その年にわが母校末広中学へ赴任していらっしゃった。
国語が専門で、柔道のクラブ顧問となった20代前半の若い教師だった。
その後結婚されて苗字が〇〇に変わったのは覚えている。

すぐに会場のスノドカフェへ電話した。
私の想像していた方とほとんど同じだったけれど、
私と同じくらいという、ただ年齢だけが違っていた。

まあ、違っていたとしても文章を勉強したい気持ちはあったから、
申し込みをして、さっそくその夜出かけて行った。
ドアを明け、案内されていった奥の正面にその人はいた。

「杉山よしたか君!」
開口一番その人は言った。

いやぁ、覚えていてくれたんだ。
私はどちらかというと優等生タイプで勉強の事しか頭になかった
付き合いの悪い生徒だったから、たぶん、記憶にないだろうな、
と思っていたのに・・・・。

 

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今でも思い出す。
若く溌溂として、目と声が大きくて、なによりも柔道着の先生はカッコよかった。
勉強を教えるというより、友達みたいにどんどん生徒の中に入ってきた。

50数年ぶりに再会した先生は私と同じようにさすがにお年を召されたけれど、
退職された今でも現代国語の分野で社会人向けに文章講座を続けていらっしゃる。

それからは、今日のテーマ「北原白秋の童謡」について、色々お話し下さり
私たち参加者は最後に作文を書く宿題を頂き、それを皆で発表し合った。
時々先生と、中学の思い出話をしながら。

老いて、まったくの偶然に懐かしい恩師に出会えるなんて・・・。
大袈裟だけれど、こんな日が人生最良の日なんじゃないかと
思えて仕方なかった。

いずれにしても、この先先生に文章を教えて頂くという楽しみが増えた。
さあ、これから益々書いて行くぞ!

お正月こそ面倒臭いことを。

明けましておめでとうございます。

今年も我が家の正月祝い膳が並びました。
妻が他人のものは気に入らない、いや、
料理が得意なので、ほとんどが手作りです。

 

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最近ではいろいろなものが入るようになったおせち料理ですが
1番大切にしているのは「祝肴三種」です。
つまり、「黒豆・田作・数の子」はわざわざ別椀に盛るのです。
ちなみに私の好きなおせちの具best3は「田作・昆布巻き・伊達巻」です。

 

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お雑煮は静岡のならではの関東風。
もちは切り餅、味はしょう油味です。
「里芋、京菜、椎茸、大根、餅」の奇数の五種で決まり。

 

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お屠蘇は先代から使っていた屠蘇器で
三つ重ねの盃に、年長者が最年少者から順番に注いでいきます。
長寿をおすそ分けする意味があるそうです。

 

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戸主の私が新年の挨拶をし、家族で今年ので抱負を述べます。
続いて妻と私が謡曲「鶴亀」の1部を謡います。
 ♪庭の砂金は金銀の・・・。♪
お屠蘇をいただいて、正月の宴の始まりです。

 

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一年に一度、黒漆の座卓を囲んで、朱漆の椀に料理を盛って、
屠蘇、おせち、雑煮の順に味わってまいります。
面倒ながらも、何年もの間元旦の決まり事となっています。

どうぞ、今年もよろしくお願いします。

今年(2017年)観た映画・・・少な~い

今年は秋以来気分が優れず、

好きな映画を観る気がしなかった。

見落とした話題作が多く残念。

 

アメリカ映画「スノーデン」(オリバー・ストーン監督)

アメリカ映画「沈黙-サイレンス」(_マーティンス・コセッジ監督)

日本映画「彼らが本気で編むときは、」(荻上直子監督)

アメリカ映画「ラ・ラ・ランド」 (デミアン・チャゼル監督)

台湾映画「クーリンチェ少年殺人事件」(エドワード・ヤン監督)

アメリカ映画「ムーンライト」(バリー・ジェンキンス監督)

イギリス映画「私はダニエル・グレイグ」(ケン・ローチ監督)

アメリカ映画「メッセージ」(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)

日本映画「彼女の人生は間違いじゃない」(廣木隆一監督)

日本映画「夜空は最高密度の青色だ」(石井裕也監督)

 

改めて思うのは、

若者が主人公の映画が良かったこと。

 

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「彼らが本気で編むときは」

彼女の人生は間違いじゃない

「夜空は最高密度の青色だ」

 

この3本の日本映画は

同調圧力が充満するストレスフルな社会の中で、

今に生きる若者の不安と自信を

誇張なくポジティブに描いていて気持ちが良い。

 

日本映画は今、俳優も監督も見事に世代替わりして

多様なスタイルの映画が花開いているのではないか。

 

外国映画ではアジアの映画が少なく、

特に世界で評価の高いフィリピン映画

静岡では一本も公開されないのにはがっかりした。

 

来年も良い映画に巡り会えますように。

タイトルがカッコいい/日本映画「彼女の人生は間違いじゃない」&「夜空は最高密度の青色だ」

最近、タイトルに惹かれて観た、若者を描いた日本映画2本。

 

彼女の人生は間違いじゃない」 廣木隆一監督

「夜空は最高密度の青色だ」 石井裕也監督

 

ともに最近の日本映画の傑作だと思う。

 

日本映画 「彼女の人生は間違いじゃない

 まず 、タイトルがいい。

主役の女優さん(瀧内久美)が自然体で、もの凄くいい。

 

東日本大震災から5年。

普段は市役所で働き、週末は高速バスで上京し、風俗嬢として働く。

被災地福島と東京を行き来する女性の日常とその思いを描いた力作。

津波で家が流されても、家族が亡くなっても、

昨日の次に今日があり今日の次には明日が来る。

 

この世界の片隅に」のすずさんの描き方より現代的に思えるのは 、

自分の生き方に死ぬ程葛藤している人間がそこにいるから。

だから、「彼女の人生は間違いじゃない 」と納得。

 

(静岡シネギャラリーで鑑賞。)

 

日本映画「夜空は最高密度の青色だ」

 

いや〜、おもしろい映画だった。

 何よりも、主人公たちがみせる次の行動に

 

    どんな事を言うのだろう?

 どんな表情を見せるのだろう?

 どんな行動に移るのだろう?

 

と言うことが予想がつかないどころか、

その事がもの凄く新鮮に感じた映画だった。

 

そう感じたのは、出処が

「夜空は最高密度の空色だ」と言う詩集だった事や、

石橋静香、池松壮亮の演技を感じさせない

生の若者そのものの姿によるのだろう。

 

イラつき疲れて煙草ばかり吸っている二人。

汗と埃と泥にまみれた工事現場の日雇い労働の男達。

酒と騒音とケバいヒカリに晒されたガールズバーのおんなたち。

 

私達の常識的な情報に包まれた今の時代を、

東京と言う寝れない都会の表面をすぱっと切って

中身を晒して見せてくれた映画。

 

(東京出張中、キネカ大森にて鑑賞)