恩田勝哉さんの島桑指物
恩田勝哉さんは現役の桑物師の中でも、
最も多く島桑材の家具を作っている江戸指物職人さんです。
元々は静岡の出身だそうで、静岡ならではの新しい技術を指物仕事に持ち込みました。
今では当たり前ですが、銘木の無垢材をスライスし、
きょうぎ状にした物を合板の上に張る突板仕事です。
おかげで、材用が乏しく無垢材では出来なかった、
四尺(120cm)の座卓や本三面座鏡台など大型の島桑家具が出現しました。
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もちろん、無垢材の良い所を使える小物も得意で、
例えばこちらの手鏡などは恩田さんのヒット商品。
もう10年以上前に頂いた物で、
桑の特徴である美しい「銀」がよく乗っている今では貴重な手鏡です。
根の瘤の部分の逆目模様を「銀」といい、
ちょうどマグロのトロのような所で珍重されています。
この手鏡、たいへんオシャレなんですが、難点がひとつ。
持ち手を下にして鏡に映す顔と、
持ち手を横(右手に持ったときは右)にして映す顔が違うこと。
無垢材の反りのため3mmの鏡が変形し、
スマート顔とデブ顔に映ってしまいますのでご用心。
こちらは「合引き」と言います。
邦楽の囃子方などが使う携帯用正座椅子です。
四つのパーツから出来ていて、組み立てて使います。
桑のように粘りけのある材でないと、
ほずがゆるんでガタついてきてしまいます。
ばらばらにしたパーツを座面裏の溝に
きっちり納めめるとこんなに薄くなります。
ハンドバッグにはいる大きさで重宝します。
ただ、普通の人が座る場合はもう少しクッション性
のある正座椅子の方が好まれるでしょうね。
東京の老舗デーパートに多く展示されていました。
私も幾つかの家具を分けてもらい、販売したこともあります。
ただ、今は和家具売り場もなく特別展で登場する位で、
あの粋な島桑指物が見られないのは残念です。