病気いろいろ 人生さまざま

2週間の病院生活で、同室となった何人かの方々。

カーテン越しに話が聞こえてきたり、親しくお話させて頂いたり。

ほんとうに、病気いろいろ人生をさまざま、でした。

 

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タクシー運転手の30代のAさん、お年寄りの車に2回も追突され、

首のヘルニアで手術のため入院。

入院費は相手の保険で出るようですが、

加害者は一度もお詫びも見舞いも無いそうです。

 

そのA君、新しく入院した男性が病室で看護師や事務員と

手続きの話を大きな声で長時間話していたのに激怒。

「そういう打ち合わせはロビーでやってくれ。

こっちは傷が痛くて余計イライラさせられる。」

カーテン越しに聞いていた私はドキッとしたのですが、

手術前の人と手術後の人のストレスの違いが歴然としていました。

 

 本を読んでいると隣から何やら異様な匂いがしてきました。

看護師さんが寝たままのBさんの姿を見て、

「Bさん、パジャマが濡れちゃってる。

あらあら、全部でちゃったねぇ。」

「便が出そうだったけれど、看護婦さんがあんまり忙しそうだったので、

ナースコールを押すの悪いと思っちゃったんだよ。」

数人でシーツから何から総入れ替え、窓も開けて消臭剤をふり撒いていました。

 

 ある資料によると、多くの少年たちの普段使用している言葉の

ベスト3は「ヤバイ」「キモイ」「ウザイ」だそうです。

サッカーのゴールキーパーで手の平を骨折した高校生のC君。

ベッドでレポートを書いて熱心に勉強して居たのですが、

手術後は傷が相当痛かったのでしょう。

「ああ、やばいやばい。」

「どこの指が痛いの?」

「親指がヤバイ。」

 

 私と同じ脊椎間狭窄症の手術で同室した愛想のいいDさん。

私と同年代の方で、奥さんと息子さん娘さんが毎日来ます。

冗談言ったり笑ったり、とても楽しそうな雰囲気。

奥さんによると、そのうちお爺さんも見舞いに来たいと言っているとか。

仲良し家族の家庭内風景が目に見えるようでした。

 

 私の退院の前日に入院されたEさん。

看護婦さんが、体温計と血圧計を持ち出し

「Eさん、体温と血圧を測りますのでお願いします。」と言うと、

「もう測ったよ。」と自分で持って来た体温計と血圧計で測った数字を

見せているようです。

看護婦さんはちょっと困った様子でしたが、更に

「普段飲んでいる常備薬も入院中は病院で管理させて頂きますので

出してください。」と言うと、

「俺は全部自分で飲み方が分かっているから自分でやるよ。」

自己管理の行き届いた御老人のようですが、

看護師さんは戸惑いながらも、説得に勤めて居ました。

 

 短い間でしたが、色々な方と歓談させて頂き、

痛くもあったけれど、有意義な興味ある入院生活でした。

1950年代の静高生を描いた小説/三木卓著「柴笛と地図」

今迄、あまり知らなかった作家「三木卓

全く聞いたことがなかった小説「柴笛と地図」(集英社文庫

 

この物語が1951年から54年まで、静岡高校で過ごした主人公の

少年の思春期を描いた、氏の自伝的小説だったとは・・・。

 

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当時静高(旧制静岡中学)は静岡大空襲で焼かれ、

駿府城趾にあった静岡三十四連隊の兵舎を使って授業が行われ、

そのため「城内高校」と呼ばれていた。

今の長谷町に戻り、再建されたのは1953年、

その秋、校名も静岡高校となったそうだ。

 

この本を読むと、当時の静高生がこんなにも大人びていたのか

と、只々驚く行動ぶりが展開される。

 

社会科学研究部に入り、共産党の党員になるコースが十代からあり、

マルクスエンゲルスの「空想から科学へ」を議論する。

西洋音楽(クラシック)に於ける造詣はプロ並み。

野村胡堂(あらえびす)の音楽評論が出て来るは

ヌブーやカペー弦楽四重奏団などの演奏批評の数々。

文学は勿論、太宰治から小林多喜二中野重治と、

デカダンスから共産主義の作家まで、びっくりするほどの読書量。

 

そして、今は懐かしい静岡市の場所や店の名前。

開かずの踏み切り「八幡の踏切」、クラシックを取り寄せるなら「すみや」

どこへ行くのも自転車で、そこは今の静岡の高校生となんら変わらない。

勿論、静岡弁「・・・だか」「・・・だけん」「・・・じゃん」も随所に出て来る。

 

そんな静岡の風景が網羅され、あの時代の空気が小説のあちこちに漂う。

 

しかし、一番驚くのは、人間関係の密なことと、自分で考えようとする

バイタリティにあふれた高校生ばかりだということ。

引揚者、片親、貧困、病気が日常茶飯事の1950年代に、

自分の力で生きていかなければ、誰も助けてくれない事を

背伸びしながらも自覚し、行動している十代であること。

 

まさに時代が過酷にも彼らに試練を与える事で、

彼らがモラトリアムで居られない状況に放り出されている。

気の毒のような、でもうらやましいような充実した人生を垣間見ることができる。

 

この小説を知ったのは、2014年3月22日の日経夕刊の文化欄を読んだ時。

そんな小説があったのかと、早々に文庫本を買った。

500ページもある長編だったので、なかなか読む機会がなかった。

それが時間が余った今、4日で読んでしまった。

 

私が母校静岡高校を卒業して、今年で50年になる。

記念の同窓会が開かれるが、ぜひこの小説の話をしてみたいと思っている。

私の腰痛(リハビリ)レポート その2

脊椎間狭窄症

腰痛対策最前線の記事によると、

腰痛には原因不明の非特異的腰痛(85%)と

原因が明確化出来る特異的腰痛(15%)がある。

重篤な特異的腰痛には腫瘍や感染、大動脈瘤によるものと、

それ以外の外傷、骨折や神経痛による腰痛に分けられる。

 

その内の神経症状の痛みがいわゆる坐骨神経痛

さらに座骨神経痛の二大原因疾患が腰椎椎間板ヘルニアと脊椎間狭窄症。

厳密にいうとその2つの疾患は腰痛ではなく、

おしりから足にかけての痛みやしびれが主症状となっている。

20代から40代に起こりやすい椎間板内の髄核が飛び出るヘルニアと

高齢者に多い加齢によって脊椎間が狭くなり神経が圧迫される狭窄症。

 

重度の脊椎間狭窄症と診断された私は、左尻上腰部と左足親指人差し指あたりに

痛みと違和感を感じながら、良くなったり悪くなったりを繰り返してきた。

そして昨年12月12日、左腰に激痛が走り立っていられなくなった。

 

その後、激痛は収まったけれど、何故か左足に力が入らなくなってしまった。

足の親指を反らせると、右親指は普通に反るけれど、左親指は力なく反らない。

これはおかしいと即座に病院で診察を受けた。

 

「神経が弱っていて筋力が落ちています。痛みや痺れは解消するけれど、

麻痺状態は早く外科治療をしないと元に戻らない可能性があります。」

医者は早いうちに手術することを勧めた。

 

・・・・・続く。

年寄りを NAMENNAYO !

最近外国映画に食指が湧かなくなった理由の一つに

陳腐なタイトルが多くなったという思いがある。

タイトルで内容を知らせようと焦るせいか、

原題と程遠いタイトルが増えている。

 

特にアート系の映画。

高齢者がお客様の為か、大きなお世話の過剰な親切。

 

(以下、最近公開された洋画から)

 

「ミス・シェパードをお手本に」  (原題 The Lady in the Van)

「ある天文学者の恋文」  (Collespondennce)

「奇跡の教室」  (Once in A Lifetime)

「奇蹟がくれた数式」  (INFINITY)

「92歳のパリジェンヌ」  (The Final Lesson)

「ストリート オーケストラ」  (The Violin Teacher)

「栄光のランナー」  (RACE)

「こころに剣士を」  (The Fencer)

「天使にショパンの歌声を」 (La Passion d'Augustine )

 

なんで 「La Passion d'Augustine(アウグスティンの情熱) 」が

「天使にショパンの歌声を」になる訳?

 

 

 

以前は原題そのままを日本タイトルにした洋画が多かったのに。

 

リバイバル公開された

「スモーク」

ライク・サムワン・イン・ラブ

なんかは想像力を豊かにさせる好例。

 

アカデミー賞最有力の

「ムーンライト」

も食指が湧く。

 

年寄りを NAMENNAYO !

中国へ行きたい!

正月三が日はいかがお過ごしだったでしょうか?

 

私は腰痛のためウォーキングが思うように出来ず、

もっぱらチャリで移動しました。

 

三日通い詰めたのは、静岡駅前の本屋「戸田書店」の二階。

静かな環境で本が選べるここは、私の大のお気に入りの場所。

そこで「中国歴史建築案内」TOTO出版を見つけました。

 

実は昨年、静岡市役所本館を見学した後、急に建築の本が読みたくなり、

玉井哲雄著「日本建築は特異なのか」「建築の歴史」

村松伸著「中華中毒」「書斎の宇宙」

など以前買いそのままになっている本を取り出した。

 

特に興味を引いたのが建築史家「村松伸」氏の

「中華中毒」ちくま学芸文庫)。

 

中国オタクの村松氏は中国本土をはじめ、台湾、韓国、ベトナム

それから日本の各地を駆け巡る。

その滞在記を含めて、中華思想が東アジアを覆い尽くすありさまを

各国の歴史建築から紐解いた東洋の古建築の膨大な資料。

その面白さは昨年読んだ本の中で群を抜いていた。

 

そして今年、その本に感化された私が出会ったのが

「中国歴史建築案内」TOTO出版)。

 

 

 

中国の建築史家「楼慶西」氏が執筆し、中国でベストセラーになった本を

日本の建築史家「高村雅彦」氏が分かりやすく翻訳した中国建築の本。

 

紫禁城、天壇から寺院、民居に至るまで、また風水、装飾、色彩も章に含めて、

写真、図面、案内マップ満載の中国建築からみた、大国中国の姿を現しています。

 

 今年はこの本をじっくり読んで、
隣国でありながらなじみの少ない中国の歴史を学ぼう。
そしていつかは中国本土へ行き、紫禁城を見てこよう。

 
なんて、未来に初夢を託して、腰の痛みを克服しようと思う三が日でした。

わたしがサプライズした・今年の映画ベスト3

映画好きの私が今年みた映画は15本。

昨年と同数で目標の20本に届かず残念。

観たかった「キャロル」や「怒り」などを見逃した。

黒衣の刺客」  ホウ・シャオシェン監督(中国映画)

「恋人たち」  橋口 亮輔監督(日本映画)

「ハッピーアワー」  濱口 竜介監督 (日本映画)

「あの日エッフェル塔の下で」  アルノー・デプレシャン監督(フランス映画)

「レヴェナント 蘇えりし者」  アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督 (アメリカ映画)

「山河ノスタルジア」  ジャ・ジャンクー監督(中国映画)

「団地」   阪本 順治監督(日本映画)

シン・ゴジラ」  庵野秀明 監督(日本映画)

「ブルックリン」  ジョン・クローリー監督(イギリス映画)

「フェイク」  森達也監督(日本映画)

「オーバーフェンス」  山下敦弘監督(日本映画)

ハドソン川の奇跡」   クリント・イーストウッド監督(アメリカ映画)

「淵に立つ」  深田 晃司監督(日本映画)

この世界の片隅に」   片渕須直監督(日本映画)

ジュリエッタ」  ペドロ・アルモドバル監督(スペイン映画)

 

以上、暇とお金を天秤に厳選してみた15本。

なんと、日本映画が半分以上。

外国映画に魅力がないのではなく、日本映画が例年になく多彩だった。

そのうちの特に好きだった3本。 (鑑賞日順)

 

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日本映画  「ハッピーアワー」

濱口 竜介監督

一皮むけば見方を変えれば、6時間近くでも、もっともっと見ていたくなるほど

日常がスリリングであることを証明出来た稀有の映画。

出演者も監督も出すぎず、ありのままに見えるところがいい。

 

アメリカ映画 「ハドソン川の奇跡」 

クリント・イーストウッド監督

ほどんどの彼の映画を見ているけれど、今まで立派すぎて好きでなかった。

この、臆病な機長像と端正なストーリーテリングが何とも魅力的で

心の底から拍手したくなった映画。

 


日本映画  「淵に立つ」 

深田 晃司監督

登場人物それぞれの絶望感が神経を逆なでするように

常に緊張感をもって観ずにはいられなかったホラー映画。

判断が分かれるラストは救いがあることを祈らずにいられない。


来年の一番の楽しみは 亡き台湾の名匠エドワード・ヤン監督が

1991年に発表した、 傑作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』が

デジタル・リマスターされ、 25年ぶりに日本で再公開されること。

静岡でも観ることが出来ればうれしい。

東西の宗教観が混在したようなホラー/日本映画「淵に立つ」

日本映画「淵に立つ」(深田晃司監督)

凄い映画だった。

そして、何よりも怖かった。

 

日曜日のシネギャラリーの夜の部は私が1番の番号札。

30分ほどロビーにいたけれど、誰も来ない。

このまま、一人でこの映画を見ると思うとぞっとした。

そのうち男性3人が入場して来たので、安心したけれど・・・。

 

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地方都市で小さな金属加工工場を営みながら

平穏な暮らしを送っていた夫婦とその娘の前に、

夫の昔の知人である前科者の男が現われる。

奇妙な共同生活を送りはじめる彼らだったが、

やがて男は残酷な爪痕を残して姿を消す。

8年後、夫婦は皮肉な巡り合わせから男の消息をつかむ。

しかし、そのことによって夫婦が互いに心の奥底に抱えてきた

秘密があぶり出されていく。

 

 輪廻は巡り孫子の代までも、みたいな仏教的世界。

罪と罰、人間の原罪を描いたキリスト教世界。

 そのどちらからものアプローチが混在して、

お気楽日本映画とは程遠く、監督、俳優を含めた、

真剣勝負を、襟を正してみるような映画。

 

身から出た錆とも言える不幸に撫でられているような主人公たち。

イラつき困惑し疲れ果ててしまう役どころの俳優たちの演技が凄い。

 

ひと気の少ない沈んだような地方都市の描写と

人間に覆いかぶさるような自然に囲まれた田舎の雰囲気も見事。

 死へ追い込もうとする悪霊から必死で逃れようともがく

ラストの主人公たちの姿が感動的だ。

 

第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門・審査員賞受賞

静岡シネギャラリーで11月25日まで